封建社会の解体期に,領主の支配から事実上独立し,一家の生計を十分に維持するに足りるだけの生産手段(土地,家畜,農具など)を所有して,自立的な農業を営む農民をいい,中世末期から18世紀ころまでの西ヨーロッパに多く見られた。西ヨーロッパでは,13世紀以降に農奴解放が進行して農民の人身的隷属がゆるみ,さらに14,15世紀には,戦乱や疫病による人口減少や大規模な農民一揆のため領主が農民に譲歩して封建地代(年貢など)を軽減せざるをえなかったから,農民のなかには,領主に対して名目的な地代を支払うだけで事実上領主の支配から独立するような者が多数あらわれた。とくに,地代が一定額の貨幣で支払われていた場合には,16世紀のインフレーションによって,その負担は著しく軽減された。これらの農民は,領主から保有している土地に対する自己の権利を強化して事実上の土地所有農民になるとともに,その土地からの生産物で家計を維持するのみならず,負担の軽減と生産力の発展とによってしだいに剰余生産物を市場で販売しうるようになり,農産物や家内工業製品(毛織物など)を販売する商品生産者になっていった。こうして封建社会の解体の中から生まれた独立自営農民は,イギリスではヨーマンyeoman,フランスではラブルールlaboureurなどと呼ばれ,彼らがさらに商品生産者として成長し,かつ貧富の両極に分解することを通じて,農村内部で資本主義が形成されていったといわれる。このように独立自営農民は資本主義形成の母体になったから,資本主義を生み出すとともに18世紀以降に解体したとされる。なお,西ヨーロッパ(および建国期のアメリカ)以外の地域では,このような独立自営農民の形成は明瞭に認められないとされる場合が多い。
執筆者:遅塚 忠躬
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…(2)とともに現役軍人から選抜される。(4)中世末期から近代前半にかけての自由な独立自営農民。中世イギリスの農民層は大別すると,領主に対し貨幣または現物の地代のみを負担し,国王の裁判のみに服する自由農民と,これらのほかに農業労働その他の作業労役(賦役)を負担し,領主の意志に服する農奴から成っていた。…
※「独立自営農民」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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