日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨーマン」の意味・わかりやすい解説
ヨーマン
よーまん
Yeoman
通常、「独立自営農民」と訳される、イギリスの中産農民。語源は、「若者」young manが縮まったものといわれる。14~15世紀には年収40シリング以上を有する自由土地保有農(フリーホルダー)をさした。彼らは州における議員選出権を与えられ、陪審員として地方行政に携わり、また百年戦争におけるイギリス軍の精鋭とたたえられた。この階層に、当時進行中であった封建制経済の解体に伴って上昇した謄本土地保有農(コピーホルダー)と一部の定期借地農(リースホルダー)が加わり、ヨーマンはジェントリと零細農の中間を占める広範な農民層をさすようになり、15世紀中葉にはイングランド、ウェールズの土地の約5分の1を保有した。チューダー朝以降の絶対主義時代には、農業経営や毛織物マニュファクチュア経営で頭角を現す者が出る一方、エンクロージャー(囲い込み)の進展により土地を奪われて離村を余儀なくされる者も多く、ヨーマン階層には両極分解がみられた。ことにヨーマンの中核であった自由土地保有農の没落は、18世紀における大地主の寡頭支配の強化とともにいっそう促進され、19世紀の資本制農業の確立によってヨーマンは実質的に消滅した。
[今井 宏]