家族労働(読み)かぞくろうどう

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

家族労働
かぞくろうどう

家族構成員である老夫婦、妻、子女などが家族関係に基づいて、家事労働とは別に、一家の生業に労働を供出する場合、この労働を家族労働とよんでいる。この家族労働は、経済的従属関係にある雇用労働や資本家的家内労働とは区別され、一般に戸主の所得を実現するための家族協業者として戸主の労働を補足するものの、その成果は戸主の所得に埋没してしまうという特徴をもっている。
 他人労働の雇用を通じて生産やサービスを組織する資本制生産とは違って、これに先行する諸社会においては、その生産が農業を中心とするものであったため、家族労働がその生産の主要な担い手であった。手工業においても、あまり熟練を必要としない作業領域を中心に家族労働が重要な役割を演じたほか、同一作業場での作業を通じて技術の伝習も行われた。商業経営についても同様であった。
 経営内において、他人労働の利用が家族労働を凌駕(りょうが)するようになるのは、工業では工場制手工業(マニュファクチュア)の段階である。この段階では、経営規模の拡大に伴って賃金労働者の比重は増すが、家族労働も重要な位置を占めている。歴史上、経営内から完全に家族労働が姿を消すのは機械制大工業段階以降のことであった。しかし、この段階以降においても、小経営は存続し、家族労働は自営農林業や中小商工業を中心になお広範に残存している。
 現在の日本の自営農林業では、資本と労働と土地所有が未分離のまま一体化している経営が多く、家族労働が中心となってそれを維持している。一人親方による下請零細工業でも、中小商業経営においても、家族労働の果たしている役割は大きい。2002年(平成14)現在、家族の経営を手伝う家族従業者は、全国就業者数の4.8%、305万人であり、このうち女子は247万人で男子の4.3倍に達している。産業別家族従業者は、農林漁業107万人(全体の約35%)、非農林漁業198万人(全体の約65%)であり、非農林漁業のうち家族従業者の多い業種は2000年現在で卸・小売業、飲食店98万人、サービス業47万人、製造業33万人、建設業27万人などである。
 これらの経営の所得は、全体としてみると、いちおう都市サラリーマンの平均所得を上回るものが多いが、それを家族従業者1人当りで計算すると、その道数十年の経験を積んだ戸主や家族従業者の1人当りの所得が、都市サラリーマンの初任給の水準を下回るようなケースがきわめて多いことが注目される。戸主による兼業の進展とか、いわゆる後継者が「家業」に見切りをつけるのは、このような理由によるものである。[殿村晋一]

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