玄語(読み)げんご

改訂新版 世界大百科事典 「玄語」の意味・わかりやすい解説

玄語 (げんご)

三浦梅園主著。〈梅園三語〉の一つ。その〈条理〉哲学の体系を詳説したもの。31歳で着手し,23年間に23回改稿して1775年(安永4)に完成したと述懐するが,実際はその後も改稿をつづけた。それらの稿本は三浦家に現存する。全文漢文で10万語,すべて自己の独自の思索より出るとして前人よりの引用はいっさいなく,一貫して独特の用語で書かれ煩瑣難解を極める。版本はなく,写本でいくらか流布した。例旨,本宗,天冊(活部天神,立部本神),地冊(没部,露部),小冊(人部,物部)の5部8章および図解160余より成る。例旨は序論凡例で,研究の動機,方法の問題,など。本宗は総論全書(ただし人部を除いて)の要約。以下,天体構造,運行,大気圏と地球,気候,動植物人体の構造,心の生理より人倫道徳の理論に至るまで,すべて〈条理〉つまり〈一二〉の論理によって体系づけている。《玄語》の〈玄〉とは言語や図示を超えた最究極の一者をいうのである。《日本思想大系》所収。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「玄語」の意味・わかりやすい解説

玄語
げんご

江戸中期から後期を代表する哲学者三浦梅園(ばいえん)の代表的著作。全8巻。本書は「反観合一、徴(あらわれ)に正に依(よ)る」という客観主義的実証主義的方法論を掲げて、まったく独創的な「玄なる一元気の研究」をほぼ完成に近いまでに推し進めた。梅園は、1753年(宝暦3)31歳の年に書き始め、75年(安永4)53歳の年に、23年の歳月と23回の換稿の果てに『安永(あんえい)四年本玄語』としていちおうの体裁を調える。しかし、思索と換稿の筆は臨終の日まで続き、その成果は『浄書本玄語』として残されている。第二主著『贅語(ぜいご)』(全14巻)、第三主著『敢語(かんご)』(全1巻)とあわせて「梅園三語」と自称する。江戸時代を支配した二大哲学としての仏教哲学が須弥山(しゅみせん)説という自然観に、儒教哲学、なかでも日本の江戸時代を支配した朱子学が地方体説という自然観に立脚しているのに対して、第三の哲学としての梅園哲学は地球体説という西洋から伝来した新しい自然観に立脚している。

[高橋正和]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「玄語」の意味・わかりやすい解説

玄語
げんご

三浦梅園が 31歳の宝暦3 (1753) 年から 53歳の安永4 (75) 年までの 23年を費やして著わした主著。人間を取巻いている全自然界に働いている法則を発見しようとした梅園の思想が展開されている。例示および本宗,天冊 (活部,立部) ,地冊 (没部,露部) ,小冊 (人部,物部) の4冊,8巻から成る。「条理の原を探究する」ことがここでの中心課題であり,そのためには,既知の知識の全部を疑い,自然の諸事象のありのままを観察することが必要であると説かれる。そして,多様な自然の「条理」を見出すためには「反して観,合せて観て,その本然を求める」反観合一の法が求められた。自然の認識に関する論理学的著述として重要である。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「玄語」の解説

玄語
げんご

江戸中期の哲学者三浦梅園(ばいえん)の代表的な著作。「贅語(ぜいご)」「敢語(かんご)」とあわせて梅園三語とよばれる。反観合一(はんかんごういつ)の認識方法によって天地の条理の様態を記述しようとしたのが主著の「玄語」で,起草以来23年23回の改稿をへて1775年(安永4)に一応完成。8巻。みずからの哲学的立場から,諸学問を批判し,「玄語」を補説したものが「贅語」で,起草以来34年15回の改稿をへて,89年(寛政元)に完成。14巻。倫理道徳に関してのべた「敢語」は,起草以来4年4回の改稿をへて,75年に出版。1巻。「梅園全集」・「日本思想大系」(「玄語」のみ)所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「玄語」の解説

玄語
げんご

江戸中期,三浦梅園の哲学書
1775年完成。8巻。儒学と洋学の思想を調和して,宇宙の構造を説明する条理の学を述べたもので,自然弁証法論理が含まれている。

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普及版 字通 「玄語」の読み・字形・画数・意味

【玄語】げんご

玄言。

字通「玄」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の玄語の言及

【三浦梅園】より

… 幼時より天地万物あらゆることに疑いを抱きノイローゼを発するほど苦しんだが,20歳過ぎて西洋天文学書によって天地の形体を知るを得,29歳または30歳で〈天地は気なり〉と気づき,つづいてその天地万物に〈条理〉のあることを覚った。かくて条理探究の書《玄語》の稿を起こし,53歳でついに完成した。別に彼が思索の資料とした中国古典,日本・中国の医書,西洋学の書(《天経或問(わくもん)》,《解体新書》,清の梅文鼎の天文学書など)を縦横に引用し批判した《贅語》があり,また人倫哲学の《敢語》がある(合わせて〈梅園三語〉,すべて漢文)。…

※「玄語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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