仏教の宇宙観に説かれる神話的な聖山。別名〈蘇迷盧(そめいろ)〉。須弥はサンスクリットのスメールSumeruの音訳。単にメールMeruとも呼ばれる。〈妙高山〉と意訳される。仏教的宇宙観によると,虚空(こくう)に風輪(ふうりん)という風(空気)の巨大な円筒が浮かんでいる。風輪の上に水輪が,水輪の上に金輪(こんりん)(地輪)がのる。金輪の上に大海があり,その中央にそびえたつのが須弥山である。須弥山は七つの同心状の山脈に囲まれ,七つ目の山脈の外側の東西南北方向にそれぞれ勝身(しようしん)洲,贍部(せんぶ)洲(閻浮提(えんぶだい)),牛貨(ごけ)洲,俱盧(くる)洲がある。南の贍部洲はインド亜大陸の形を反映しているが,これが〈われわれの〉住む大陸とされる。この大陸の地下に地獄,餓鬼の世界がある。四洲の外,金輪の外周をふちどる形で鉄囲山(てつちせん)Cakravāḍa-parvataがめぐる。須弥山を中心とし,その中腹を高さとして,ちょうど四洲の上を通過するように日月星辰が転回している。須弥山の上半分は帝釈天(インドラ)などの天(神)の住む世界で,さらにその上空には何層もの神の世界が重なっている。このような宇宙観を俗に須弥山宇宙観と呼ぶ。これは一種の天動説なので,徳川時代から明治時代にかけて西洋の地動説が輸入されたとき,それに対抗してこれを擁護しようとする仏僧が現れた。
→宇宙
執筆者:定方 晟
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
仏教宇宙論における世界中心的な巨山。サンスクリット語でメールMeruまたはスメールSumeruといい、後者が須弥ないし、蘇迷盧(そめいろ)と音訳される。意訳は妙高(みょうこう)。水をたたえた金輪(こんりん)の中心に立ち、水面上の高さは8万由旬(ゆじゅん)(1由旬は一説に約7キロメートル)で、周囲には同心状に七つの山脈が取り巻く。最外周の山脈のさらに外には、須弥山の東西南北の方角にあたって一つずつ大陸があり、そのうち南にあるのが、われわれの住む大陸「贍部洲(せんぶしゅう)」である。須弥山を中心に太陽、月、星が水平に回っている。山の東西南北の面はそれぞれ異なる物質からなるが、瑠璃(るり)でできた南面は南の空を青く映えさせている。山腹には四大王天(しだいおうてん)らが住み、頂上には帝釈天(たいしゃくてん)を首領とする三十三天(忉利天(とうりてん))らが住む。頂上には善見城(ぜんけんじょう)や殊勝殿(しゅしょうでん)があり、一種の楽園となっている。アレクサンドロス大王の東征伝に出る山名メーロスやトルクメニスタンの都市名メルブ(現マリー)などと関連があるかもしれない。
[定方 晟]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
…しかもそれは人間の精神的原理アートマンとも重ねて考えられることになる。こうした中で形づくられた宇宙形態論は,その後仏教的宇宙観である須弥山(しゆみせん)説に伝えられる(後出〈仏教の宇宙観〉参照)。 同じく古代文明の一つ中国では,神話段階にせよ,道教にせよ,儒学にせよ,どちらかといえば,直線的な時間構造をもつことで,むしろヘブライ=キリスト教のそれに近いが,それも仏教の伝来とともに少しずつ変形していくことになる。…
…また,世界の四守護神の一つで,北方をつかさどるクベーラKubera神(別名バイシュラバナVaiśravaṇa,毘沙門天(びしやもんてん))の宮殿もこの山にあるといわれる。仏教の宇宙論におけるスメールSumeru山(須弥山(しゆみせん))がこの山と同一視されることもしばしばある。【吉岡 司郎】。…
…このほかチベットのカイラス山も霊山として知られている。 仏教の山岳観としてはヒマラヤの信仰をもとにした須弥山(しゆみせん)が有名である。須弥山は世界の中心にそびえる高さ八万由旬の山で,山頂には帝釈天,山腹には四天王が居し,日月がその周囲を回るとされている。…
…中国では仮山という。古墳も築山の一種といえるが,庭園では612年(推古20)に渡来人路子工(みちこのたくみ)が皇居の南庭に設けたという須弥山(しゆみせん)が,記録(《日本書紀》)にあらわれる最古の例である(ただし,これを須弥山石像とする説がある)。平安時代以降,毛越寺(もうつうじ)庭園はじめ実例は多いが,特に江戸時代の大名庭園では庭景の一要素として重視され,高い築山上からの眺望を目的としたり(東京駒込六義園,高松栗林園),富士山(熊本水前寺成趣園)や中国の廬山(東京小石川後楽園)など内外の名勝を写したりして,趣向をこらしたものがつくられた。…
…この宇宙の上半分と下半分とにそれぞれ七つの階層があり,両者の中間に大地がある。大地はメール山(須弥山)を中心とする円盤であり,七つの大陸と七つの海をもつ。真中に神々が住むメール山がそびえ立つ大陸がジャンブ・ドビーパと称され,その重要部分がバーラタバルシャ,すなわちインドである。…
※「須弥山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新