玉川・多摩川(読み)たまがわ

精選版 日本国語大辞典 「玉川・多摩川」の意味・読み・例文・類語

たま‐がわ ‥がは【玉川・多摩川】

[1]
[一] 全国に六か所あり、六玉川(むたまがわ)と総称される川。歌枕。
(1)京都府南部、綴喜郡井手町にある川。井手の玉川。山吹と蛙の名所。
(2)大阪府高槻市にある川。三島の玉川。卯の花の名所。
(3)滋賀県草津市にある川。野路の玉川。萩の名所。
(4)和歌山県北東部、高野山奥院付近の川。高野の玉川。
(5)東京都を流れる多摩川調布の玉川。
(6)宮城県塩竈(しおがま)市野田を流れる川。野田の玉川。千鳥の名所。
※後拾遺(1086)夏・一七五「見渡せば波のしがらみかけてけり卯の花さける玉川の里〈相模〉」
※新古今(1205)春下・一五九「駒とめて猶水かはん山ぶきの花の露そふゐでの玉川〈藤原俊成〉」
[二] (多摩川) 六玉川のうち、特に秩父(ちちぶ)山地南部の笠取山に源を発し、東京都西部を南東流して東京湾に注ぐ川。都の上水道の水源の一つで、上流に奥多摩湖がある。支流秋川、日原川(にっぱらがわ)とともに多くの景勝地をもつ。全長一三八キロメートル。
万葉(8C後)一四・三三七三「多麻河泊(タマガハ)にさらす手作(てづくり)さらさらに何(なに)そこの児のここだ愛(かな)しき」
※雑俳・柳多留‐八一(1824)「玉川を掛樋に遣ふ花の江戸」
[四] もと小堀遠州の所持した、名物の茶入の名。
洒落本・通言総籬(1787)一「瀬との玉川と滝波を見せによこしたが。尤遠州の書付があったが」
[五] (多摩川) 歌舞伎所作事。長唄。永井素岳作詞。五世杵屋勘五郎作曲。明治四一年(一九〇八)新橋演芸会初演。東京の水道の源である多摩川を、その山奥から歌い起こし、順次下流に及び、名所や風物題材としたもの。明治後期の代表曲の一つ。
[2] 水をいう、花柳界隠語
※滑稽本・戯場粋言幕の外(1806)下「『此酒はおかしく水っぽいやうだ』『フン、玉川を割過たか』」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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