王引之(読み)おういんし

精選版 日本国語大辞典 「王引之」の意味・読み・例文・類語

おう‐いんしワウ‥【王引之】

  1. 中国、清代の学者。字(あざな)は伯申。江蘇高郵の人。父、念孫の学問継ぎ訓詁(くんこ)学上、大きな業績を残した。著「経伝釈詞」「経義述聞」。(一七六六‐一八三四

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「王引之」の意味・わかりやすい解説

王引之
おういんし
(1766―1834)

中国、清(しん)朝中期の学者。王念孫(ねんそん)の子。字(あざな)は伯申(はくしん)。江蘇(こうそ)省高郵(こうゆう)州の人。1799年(嘉慶4)の進士。翰林院(かんりんいん)編修となり郷試の正考官や、都察院(とさついん)、兵部、吏部の高官を歴任して会試の知貢挙(ちこうきょ)を務め、礼部尚書となり、道光(どうこう)14年11月24日、工部尚書在官中に卒(しゅっ)し、文簡(ぶんかん)と諡(おくりな)された。その著『経義述聞(けいぎじゅつぶん)』32巻(1827)は、その名のとおり父から聞いた経解釈を述べるという意味で、「家大人曰(かたいじんいわ)く」として父念孫の説を明示しつつ、古来の伝箋(でんせん)注釈ではなお疑義のある箇所につき、十分な証拠に基づく論証を展開して、経本来の意を解明する。『太歳考(たいさいこう)』『周秦名字解詁(しゅうしんめいじかいこ)』はこれに合刊され、また『経伝釈詞(けいでんしゃくし)』10巻は先秦(せんしん)古書における虚字の用法を解く。その学は父とともに求是の学といわれ、戴震(たいしん)、段玉裁(だんぎょくさい)とあわせ戴段二王の学と称される。

[近藤光男 2016年3月18日]

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改訂新版 世界大百科事典 「王引之」の意味・わかりやすい解説

王引之 (おういんし)
Wáng Yǐn zhī
生没年:1766-1834

中国,清の経学者。字は伯申,曼卿と号した。江蘇高郵の人。嘉慶4年(1799)最優秀の成績で進士となり,工部尚書にまでなった。父王念孫の学を受けついで,ことに文字・音韻の学に詳しく,高郵王氏父子と並称された。実は王念孫の父,王安国(文粛公)も吏部尚書にまでなった篤学の高官で,王引之の学問は王氏3代の学の精華である。《経義述聞》15巻,《経伝釈詞》10巻はとくに名高いが,経書の訓詁を説く《経義述聞》は,すなわち〈聞けるを述ぶ〉を書名とするように,すすんで父王念孫の学問の祖述者であろうとしているため,どこが王引之の独創であるかを見とどけることが,しばしば困難となる。死後文簡公と諡(おくりな)された。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「王引之」の意味・わかりやすい解説

王引之
おういんし
Wang Yin-zhi

[生]乾隆31(1766)
[没]道光14(1834)
中国,清の学者。江蘇省高郵の人。字,伯申。号,曼卿。諡は文簡。嘉慶4 (1799) 年進士に及第。翰林院編修となり,都察院左副都御史,国史館副総裁などを経て武英殿総裁となった。父王念孫の学を継ぎ,特に語学にすぐれ,戴震段玉裁および父とともに「戴段二王」と称される。古典に現れる虚字 (助詞) に新しい解釈を施した『経伝釈詞』,経書について古来の注疏を比較して断を下した『経義述聞』がある。道光8 (1828) 年には勅命によって『康煕字典』の誤字を正した。

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世界大百科事典(旧版)内の王引之の言及

【皖派】より

…皖とは中国安徽省の古名で,清代に,この地に多くの学者を輩出したので,その人々を皖派と称しているが,大きくは浙西学派に含まれる。江永,戴震に源を発して段玉裁,任大椿,王念孫,王引之,さらに後の兪樾(ゆえつ),孫詒譲(そんいじよう)らに受けつがれた。この学派は懐疑的態度によって事実を確かめ,帰納的論理的に分析する方法を共通点としていることで,恵棟らの漢代訓詁を固守する呉派とは大いに異なる。…

【康熙字典】より

…親字4万7035字,さらに古代の異体字1995字を収めるというのは,それまで中国で作られたどの字書よりも多い。ただ多くの人を使役しわずか6年間で完成させただけに誤りも多く,道光帝の命を受けて1827年(道光7)王引之が《字典考証》を作り,引用上の誤り2588条を正した。いまの本は普通この《考証》を付録しているが,誤りはなお多いという。…

※「王引之」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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