康煕字典(読み)こうきじてん

改訂新版 世界大百科事典 「康煕字典」の意味・わかりやすい解説

康煕字典 (こうきじてん)
Kāng xī zì diǎn

中国,清の康煕帝の命令で編集された字書。帝の序文では《字典》とだけ呼ばれる。張玉書(1642-1711)らが監修して1716年(康煕55)に完成した。214の部首が筆画数の順に並べられ,部内の文字の配列はまたその筆画数によるという構成は,この字典がその中核として取り入れた明の梅膺祚(ばいようそ)の《字彙》,張自烈の《正字通》のそれをうけるものであり,1字1字については反切による字音,ついで字義を示し,字義ごとにその用例を列挙するという方式とともに,わが漢和字典にまで引き継がれているが,漢和字典が載せるような〈熟語〉の項はこれらの字典には無い。親字4万7035字,さらに古代の異体字1995字を収めるというのは,それまで中国で作られたどの字書よりも多い。ただ多くの人を使役しわずか6年間で完成させただけに誤りも多く,道光帝の命を受けて1827年(道光7)王引之が《字典考証》を作り,引用上の誤り2588条を正した。いまの本は普通この《考証》を付録しているが,誤りはなお多いという。日本の渡部温が独自に校勘した《標注訂正康煕字典》(1885)はさらに多くの誤りを指摘していて,国外での評価も高い。これらの補訂を利用すれば《字典》は誤りを含みつつなお常用するに足りる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「康煕字典」の意味・わかりやすい解説

康煕字典
こうきじてん

中国、清(しん)代につくられた漢字の字書。42巻。康煕帝の勅命により、張玉書、陳廷敬ら30人が5年を費やして1716年に完成した。十二支の順に12集(おのおの上、中、下あり)に分け、4万7035の字数を収める。『説文解字(せつもんかいじ)』(漢、許愼撰(きょしんせん))、『玉篇(ぎょくへん)』(梁(りょう)、顧野王(こやおう)撰)、『唐韻(とういん)』(唐、孫愐(そんめん)撰)、『広韻(こういん)』(宋(そう)、陳彭年(ちんほうねん)ら奉勅撰)、『集韻』(宋、丁度(ていたく)ら奉勅撰)、『古今韻会挙要』(元、熊忠(ゆうちゅう)撰)、『洪武(こうぶ)正韻』(明(みん)、宋濂(そうれん)ら奉勅撰)など、歴代の代表的な字書を参照し、とくに『字彙(じい)』(明、梅膺祚(ばいようそ)撰)、『正字通』(明、張自烈撰)に基づく部分が多い。楷書(かいしょ)の部首画数順による配列法をとり、字音字義を示し、古典における用例をあげ、この種の字書としてはもっとも完備したものとされる。ただし、熟語は収録していない。道光(在位1821~50)期の重刊版では王引之(おういんし)が2588条の誤りを校訂しており、この校訂部分をまとめたものが『字典考証』である。日本における校訂としては、明治期に渡部温(おん)の『康煕字典考異正誤』がある。多くの刊本があるが、校訂を活用したものは少ない。1958年の中華書局縮印本、1905年(明治38)の吉川弘文館縮印本などが使用に便利である。

[石橋崇雄]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「康煕字典」の意味・わかりやすい解説

康煕字典
こうきじてん
Kang-xi zi-dian

中国の字典。清の康煕帝の勅命により,陳廷敬,張玉書ら 30人の学者が,5年の歳月をかけて編纂した。康煕 55 (1716) 年成立。明代の『字彙』『正字通』などの構成に拠って,さらに内容を充実させたもの。 12支の順に 12集に分れ,214の部首を立て約4万 7000字を各部首に配属させて画数順に配列,各字について反切による発音,訓詁,字解をつけ,俗字,通用字を示してあり,今日の漢字字典の体裁がここに定まったといえる。字解はほぼ妥当で,適切な古典の用例が引かれ,長く最良の字書として日本でも利用されてきた。道光7 (1827) 年,王引之が命を受け『字典考証』をつくり,2588条を訂正しており,日本でも渡辺温の『訂正康煕字典』がある。

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百科事典マイペディア 「康煕字典」の意味・わかりやすい解説

康煕字典【こうきじてん】

中国の代表的字典。1716年清の張玉書〔1642-1711〕らが康煕帝の勅を奉じて編纂(へんさん)。《説文解字》《玉篇》を底本とし,諸書を校合,12集に分け,毎集を3子巻(上・中・下)に細分し,すべて119部。巻首に総目・検字・弁似・等韻各1巻,巻末に補遺・備考各1巻を付ける。親字4万7035字,古代の異体字1995字を収める。

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世界大百科事典(旧版)内の康煕字典の言及

【辞書】より


[江戸時代]
 漢字の辞書としては,前の時代にできた《和玉篇》《下学集》《節用集》の類がこの時代にも増訂改編されて,多くの新しい内容の異本を生じた。このほか中国から新たに伝えられた《大広益会玉篇》《康熙(こうき)字典》などもそのままか,または加筆改編されて広く行われた。 イロハ引きの国語辞書には,和歌連歌のために松永貞徳の《歌林樸樕(かりんぼくそく)》その他が現れ,また国学などで上古・中古の研究がさかんになるにつれ,古語を集めた辞書が作られるようになった。…

※「康煕字典」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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