王願堅(読み)おうがんけん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「王願堅」の意味・わかりやすい解説

王願堅
おうがんけん / ワンユワンチェン
(1929―1991)

中国の小説家。山東(さんとう)省諸城(しょじょう)県相州(そうしゅう)鎮の人。故郷で小学校を卒業するが、『聊斎志異(りょうさいしい)』を愛読したという。1944年15歳で故郷を離れ、抗日辺区(へんく)(抗日根拠地)浜海(ひんかい)幹部学校に学ぶ。1945年八路軍に参加、宣伝隊で活躍、抗日戦勝利を迎える。解放戦争中は華東野戦軍の文工団分隊長になり、また新華社(しんかしゃ)支社の記者や同編集室副主任となって活躍。1947年中国共産党に入党。1949年20歳で新中国の建国を迎えた。1952年より『解放軍文芸』誌編集員となり、1953年福建(ふっけん)省東山(とうざん)島に派遣され、第二次国内革命戦争期の老根拠地(抗日戦以前の国共内戦時代の古い革命根拠地)で多くの老戦士から感動的体験談の聞き取りをしたが、これが彼の創作の原点とも素材の宝庫ともなった。その後「八一映画製作所」で脚本創作を担当、さらに解放軍芸術学校文学系主任となる。短編処女作『党費』(1954)の発表が反響をよび、1958年『党的女児(党の娘)』の題で映画化された。ついで「糧食的故事」「支隊政委(連隊の政治委員)」など老根拠地の闘いを描いたもの、「七根火柴(七本のマッチ)」「三人行」「趕隊(かんたい)(原隊を追いかける)」など紅軍長征を描いたもの、「普通労働者」「媽媽(まま/マーマ)(お母さん)」「休息」など老革命家の優れた人間像を描いたものなど好短編を次々と発表した。これらは短編集『党費』(1956)、『普通労働者』(1958)、『後代(後継者)』(1959)、『珍貴的紀念品(貴重な記念品)』(1960)などにまとめられる。彼の作品にはかならずインパクトの強い「閃光(せんこう)点」(キラリと光る感動的な見せ場)があって、大きな魅力となっている。1956~1966年の10年間、革命回顧録叢書(そうしょ)『星火燎原(りょうげん)』全10巻(1959~1963年、人民解放軍30周年征文編集委員会編、人民文学出版社刊)の編集事業に従事。「文化大革命」中は批判迫害を受けるが、1970年、ふたたび軍隊に入り、1972年と1975年の2回、井岡山(せいこうざん)や江西(こうせい)の老根拠地、および遵義(じゅんぎ)や雪山草原地区など長征の足跡を訪ね、作品世界の現場を調査する。また陸柱国(りくちゅうこく/ルーチュークオ)(1928―2022)と共作で児童映画脚本『閃閃的紅星(キラキラ光る赤い星)』(1975)を出版。映画化され、全国少年児童映画創作2等賞を獲得した。「文革」後も多くの短編を発表、『足跡』(1977)は1978年優秀短編小説賞を獲得。短編集『小遊撃隊員』(1978)も広く愛読された。1984年『王願堅小説選』が出版された。

[伊藤敬一]

『文理書院編・刊『現代中国創作集 赤い花の咲く墓』(1959)』

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