瓜盗人(読み)ウリヌスビト

デジタル大辞泉 「瓜盗人」の意味・読み・例文・類語

うりぬすびと【瓜盗人】

狂言。瓜盗人が、畑の持ち主の化けたかかしとも知らず、かかしを相手に芸のけいこを始め、懲らしめられる。

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精選版 日本国語大辞典 「瓜盗人」の意味・読み・例文・類語

うり‐ぬすびと【瓜盗人】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 畑の瓜を盗む人。瓜どろぼう。
      1. [初出の実例]「瓜ぬす人が瓜をとるをみて」(出典:玉塵抄(1563)五二)
    2. 道義に反した人をののしっていう語。
      1. [初出の実例]「たとひ瓜ぬすびとといはるるとも」(出典:蓮如御文章(1461‐98))
  2. [ 2 ] 狂言。各流。瓜盗人を捕えようと主(あるじ)案山子(かかし)になっているのも知らず、盗人がやって来て案山子を相手に祇園会(ぎおんえ)でする責めのけいこを始める。案山子がたたくので、不思議がっているところで、主は扮装をぬぎ、盗人を追い込む。

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改訂新版 世界大百科事典 「瓜盗人」の意味・わかりやすい解説

瓜盗人 (うりぬすびと)

狂言の曲名雑狂言。畑のウリ何者かに盗まれているので,畑主は案山子(かかし)を作っておく。そこへやってきた瓜盗人が,一度は案山子を人と見まちがえて驚くが,作り物と知り腹を立て,案山子をこわし畑を荒らして立ち去る。翌日,畑主自身が案山子に化けて待ち伏せる。ふたたびやってきた盗人は,畑主の化けた案山子の仮面を見て,祭礼余興に出る罪人(地獄の亡者)を連想し,案山子を罪人や鬼に見立てて,鬼が亡者を地獄へ責め落とすまねを演ずる。責め,責められしながら,ひとりおもしろがるうちに,正体をあらわした畑主の一喝をくらって追い込まれる。登場人物は瓜盗人,畑主の2人で,瓜盗人がシテ。狂言の盗人通有のまの抜けた善人ぶりと,のどかな田園情緒が一曲を貫き,趣向としては,シテの瓜盗人が囃子はやし)の演奏で杖によって舞う〈責メ〉の演技が見どころ。案山子はウソフキの面に水衣を着せ,杖を持たせて脇座にすえた葛桶(かずらおけ)の上にしつらえる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「瓜盗人」の意味・わかりやすい解説

瓜盗人
うりぬすびと

狂言の曲名。雑狂言、盗人物。畑主(はたぬし)がウリ畑に案山子(かかし)をつくった夜、瓜盗人(シテ)がやってくる。暗いので、転がりながら体に敷いたウリをもぎとっているうち、ふと人影が目に入り、平謝りに謝る。よく見るとそれは案山子だったので、怒ってこれを壊し、逃げて行く。翌日見回りにきた畑主は腹をたて、今度は自分が案山子を装って待っている。そこへまたやってきた瓜盗人は、案山子を相手に、祭礼でする鬼の責め(罪人を地獄へ責め落とそうとする舞的な動き)の稽古(けいこ)を始める。畑主はころあいをみて、杖(つえ)で瓜盗人を打ち追い込んでいく。ウリを盗む動作、鬼の責めが見どころ。ウソフキの面などを用いた案山子の姿が奇抜である。

[林 和利]

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