( 1 )①から②の意に転じて用いられるようになるのは中世頃からと考えられる。近世には、「かがせ」という変化形も生じた。古くは、「古事記‐上」に「山田の曾富騰(ソホド)」とあるように、「そほど」あるいは「そほづ」と呼ばれた。
( 2 )当初は、「かがし」という濁音形が多く用いられたと考えられるが、関東地方では「かかし」と発音されており、江戸時代後半には「かかし」が勢力を増していったものと思われる。
( 3 )語源については、「かがし(某)」からとする説もある。
( 4 )「案山子(あんざんし)」は、もと中国の禅僧が用いた言葉で、案山(山中の低地の意)の田畑に鳥獣を防ぐために立てた人形を意味する語。それを借りて、日本で「かかし」に当てるようになった。
農作に害を及ぼす鳥獣を排除する目的で田畑に設ける装置。人形や神札などによるもの,においや音・色などによるものなどがある。かかしに案山子の字をあてる由来は明らかでない。かかしは〈鹿驚(かがせ)〉の意から出たともいわれるが,一般には悪臭を発して鳥獣を追う〈嗅(か)がし〉が語源とされている。現在ではかかしの語が一般的であるが,これをソメという地方が長野や岐阜,愛知に分布し,徳島や種子島ではこれをシメという。ソメ,シメとも〈占〉に関係した言葉であろう。また,かかしをオドシと呼ぶ地域も中国,四国,九州,北陸と近畿地方の一部にあり,その目的をよくいいあらわしている。毛髪を焼いたり,鳥獣の死体をつるしたりするのは嗅がしの一般的な方法であるが,焼くことによりいっそう臭気が発散するので,元来は焼き焦がしたものが本式であったと考えられる。岐阜では猪の皮を焼き,あるいは鹿の脂を煤に混ぜてこれを用いた。このほか,鳴子やししおどしのサコンタロウ,ソウズのように大音を発する装置や,新しくは銀紙や反射テープを利用し光を発して鳥獣を追うものなどもある。かかしに神札など神の依代(よりしろ)を利用するのは鳥獣の背後に悪霊などの存在を考えたためである。かかしはまた神の依代そのものでもあった。《古事記》ではかかしは〈久延毘古(くえびこ)〉の神であるとされる。かかしを田の神の依代としてまつる民俗例もある。長野県下では旧10月10日の十日夜(とおかんや)の行事に,カカシアゲまたはソメノ年取リといい,かかしに蓑笠を着せて箒・熊手を両手に持たせ,餅や二股大根を供えてこれをまつる。同県諏訪地方ではこの日はかかしの神が天に上がる日といい,同じく南安曇地方ではかかしが田の守りを終えて山の神になる日だとの伝承がある。また,群馬県下では正月14日にかかし神を作り,新潟では同日かかしを立て膳を供える風習もある。
執筆者:大島 暁雄
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…《古事記》にみえる神の名。〈クエ〉は〈崩(く)ゆ〉の連体形で身体の崩れた男を指すと思われ,また案山子(かかし)のことである。大国主(おおくにぬし)神が出雲の御大(みほ)(美保)の岬にいたとき,海上から羅摩(かがみ)の船(ガガイモの船)に乗り,鵝(ひむし)の皮(蛾の皮)の衣服を着た神が近づいた。…
…《古事記》によれば,大国主神が出雲の御大之御前(みほのみさき)にいたとき,波のかなたより天之羅摩船(あめのかがみのふね)(ガガイモのさやでできた船)に乗り,蛾の皮を衣服として漂着した神があった。名を問えども答えず,まただれもその素姓を知らなかったが,ヒキガエルと久延毘古(くえびこ)(山田の案山子(かかし))によって,神産巣日(かむむすひ)神(神皇産霊尊)の子スクナビコナであることが知れた。カムムスヒは,わが子のうちで〈手俣(たなまた)より漏(く)きし子ぞ〉(指のあいだから落ちた子だ)といい,オオナムチと兄弟になってその国を作り固めよと命ずる。…
※「案山子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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