生く(読み)イク

デジタル大辞泉 「生く」の意味・読み・例文・類語

い・く【生く】

[動カ四]
生命を保つ。生存する。生きる。「―・けるしかばね
「限りとて別るる道の悲しきに―・かまほしきは命なりけり」〈桐壺
生き延びる。
「―・かん定辛くてこそ―・かめ」〈今昔・二三・二一〉
[動カ上二]い(生)きる」の文語形
[動カ下二]い(生)ける」の文語形。
[補説]上代平安時代には四段活用であったが、中世以降には上二段活用に変化し、のち一段活用となった。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「生く」の意味・読み・例文・類語

い・く【生】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行四段活用 〙
    1. 命を保つ。生存する。また、死ぬような状態からのがれて助かる。⇔死ぬ
      1. [初出の実例]「あまざかる鄙(ひな)の奴(やつこ)天人(あめひと)しかく恋ひすらば伊家(イケ)るしるしあり」(出典万葉集(8C後)一八・四〇八二)
      2. 「後は誰(たれ)にと心ざす物あらば、いけらんうちにぞ譲るべき」(出典:徒然草(1331頃)一四〇)
    2. 死んだもの、死にかけたものが命をとりもどす。よみがえる。
      1. [初出の実例]「逕(ふ)ること三日乃ち蘇(さ)め甦(イキタリ)〈興福寺本訓釈 甦 伊支太利〉」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
    3. 生命がこもる。生き生きする。
      1. [初出の実例]「一の実践的に生ける思想として」(出典:竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉自序)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 カ行上二段活用 〙いきる(生)
  3. [ 3 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙いける(生)

生くの語誌

自動詞としては古くは四段活用のみであったが、平安末期頃から上二段活用が生まれ、次第に交替していった。和歌では「行く」を掛けて用いることもある。


いく【生・活】

  1. 〘 接頭語 〙 ( 四段動詞「いく(生)」の連体形から ) 名詞の上に付けて、いきいきとしている、生命と力が永久である、の意で、ほめたたえる気持を添える。「生(いく)太刀」「生(いく)井」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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