フランスの作家アンドレ・ジッドの中編小説。1919年発表。主人公の牧師は身寄りのない盲目の少女を引き取って養育しているうちに、少女に愛を覚えてついに肉体を所有する。牧師の感化で人生を美しいものと信じていた少女は、手術で開眼して現実を見るや、自分の罪を悟って自殺する。第一次世界大戦中、福音(ふくいん)書に読みふけったジッドは、キリストのことばのなかには戒律や禁止はない、キリストの教えているものはひたすら愛であると解釈したが、この自由解釈は挫折(ざせつ)した。だが少女が牧師の息子によって改宗させられなかったら自殺しなかったのではないか、いいかえれば、少女はカトリック的な罪悪感の犠牲になったのではないか、という疑問も提出している。
[新庄嘉章]
『『田園交響楽』(川口篤訳・岩波文庫/神西清訳・新潮文庫)』
…吉屋信子の短編小説の映画化《お嬢さん》(1937)を第1作として監督に昇進する。アンドレ・ジッドの同名の小説を翻案映画化したメロドラマ《田園交響楽》(1938),新鋭戦闘機のPR映画ともいうべき《翼の凱歌》(1942)などを撮ったのち,召集されて中国の戦場に送られ,46年,最後の引揚船で帰還した。 47年,ドキュメンタリー作家亀井文夫と共同監督で,〈憲法普及会〉から東宝に依嘱された〈戦争放棄〉をテーマとする〈憲法記念映画〉として《戦争と平和》を撮り,真の作家的出発をする。…
※「田園交響楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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