由由・忌忌(読み)ゆゆしい

精選版 日本国語大辞典 「由由・忌忌」の意味・読み・例文・類語

ゆゆし・い【由由・忌忌】

〘形口〙 ゆゆし 〘形シク〙
[一] 触れると重大な結果をもたらすので、触れてはならない。はばかるべきである。
① 神聖であるので触れてはならない。恐れつつしむべきである。恐れ多い。恐ろしい。
古事記(712)下・歌謡御諸(みもろ)の 厳白檮(いつかし)がもと 白檮(かし)がもと 由由斯伎(ユユシキ)かも 白檮原童女(かしはらをとめ)
梁塵秘抄(1179頃)二「目より下にて鈴振れば、懈怠(けたい)なりとて、ゆゆし、神腹立ちたまふ」
② けがれているので忌み避けねばならない。不吉である。縁起が悪い。心配すべきさまである。
万葉(8C後)一二・二八九三「朝去にて夕は来ます君ゆゑに忌忌久(ゆゆしク)も吾は嘆きつるかも」
③ いやな感じである。うとましい。いまいましい。
落窪(10C後)二「翁の文見む事のゆゆしうて、あこぎかへり事せよと書きつけてさし出したれば」
④ 気がかりである。心配である。
蜻蛉(974頃)中「ゆゆしとおもふ人も、ただひとりいでたり、胸うちつぶれてぞ、あさましき」
[二] 程度がはなはだしい。一通りでない。大変である。容易でない。大層である。すっかり…である。
※宇津保(970‐999頃)祭の使「ゆゆしき物羨みをのみも、となん」
謡曲・安宅(1516頃)「さてはおん下向を存じて立てたる関にて候ふと存じ候ふ間、これはゆゆしきおん一大事のことにて候」
[三] 非常にすぐれている。すばらしく立派である。
① 不吉なことが思われるほどすぐれている。そら恐ろしいほど美しい。
源氏(1001‐14頃)夕顔「げにうちとけ給へるさま世になく、所からまいてゆゆしきまで見え給」
② 非常に立派である。非凡である。豪勢である。
平家(13C前)一「一紙一句をもて三塔三千の憤をやすめ、公私の恥をのがれ給へる時忠卿こそゆゆしけれ」
御伽草子・物くさ太郎(室町末)「瓔珞御簾をかけ、馬屋侍所にいたる迄、ゆゆしくつくり立て居ばやと、心には思へ共」
[語誌](1)「ゆ(斎)」を重ねて形容詞化したもので、手に触れたり、言葉に出したりしては恐れ多く、あるいはそれが不吉であることを表わす。
(2)上代用法は「ゆ(斎)」の意識が濃厚で、神聖で恐れ多い(一)①の場合と、縁起が悪く不吉なものを指す(一)②の場合とがある。中古以降は、(二)のように単に程度のはなはだしさを表わす用法も見られるようになるが、その場合でも不吉さを含んだものが見られる。
(3)中世には(三)②のようなプラス意味の程度のはなはだしさをいうようにもなる。
ゆゆし‐が・る
〘他ラ四〙
ゆゆし‐げ
〘形動〙
ゆゆし‐さ
〘名〙

ゆゆし【由由・忌忌】

〘形シク〙 ⇒ゆゆしい(由由)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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