民間で営利を目的とした書店刊行の書籍。勅版、官版、藩版、寺院版に対する。広い意味で私版を含めていう場合もある。日本の書物で本屋の名のあるものは、1609年(慶長14)京都の本屋新七刊行の『古文真宝後集』が古く、1608年『五家正宗讃(ごけしょうしゅうさん)』を刊行した中村長兵衛尉、1614年『遍照発揮性霊集』を刊行した寺町の市右衛門も書肆(しょし)と思われ、また仮名抄などに「本能寺前町開板」の刊記のあるものがある。漢語では坊刻版、坊刻本、坊板、坊本などの称があり、坊は商店をいう。中国では宋(そう)代に民間の本屋が現れ、臨安、福建に多くあった。南宋の臨安のものを書棚本、棚本といい(棚は小屋がけの意)、宋末以後明(みん)代までの建安(福県省建寧府建安県麻沙鎮)のものを麻沙(まさ)本といい、麻沙本は校訂が一般に粗雑といわれている。
[柴田光彦]
出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報