勅版(読み)チョクハン

デジタル大辞泉 「勅版」の意味・読み・例文・類語

ちょく‐はん【勅版】

勅命により版行された書籍慶長勅版の「神代紀」、元和勅版の「皇朝類苑」など。

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精選版 日本国語大辞典 「勅版」の意味・読み・例文・類語

ちょく‐はん【勅版・勅板】

  1. 〘 名詞 〙 勅命によって版行された印本。主に文祿二年(一五九三)、後陽成天皇の勅命による活字印刷の古文孝経に始まり、慶長勅版・元和勅版などの古活字版がある。勅本
    1. [初出の実例]「活字神代紀 神代巻二冊、俗伝て勅板と称し、元亀帝の刻ませ玉ふと云あり」(出典:随筆・好古日録(1797)二一)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「勅版」の意味・わかりやすい解説

勅版
ちょくはん

天皇の勅命によって刊行された書物のことで、とくに後陽成(ごようぜい)天皇、後水尾(ごみずのお)天皇が刊行した十数種の活字印本をいう。16世紀末に朝鮮より伝来した活字印刷技術は、わが国の出版事業に大きな影響を与えた。この印刷法で最初に刊行された活字本が、1593年(文禄2)の後陽成天皇勅版『古文孝経(こぶんこうきょう)』で、「文禄(ぶんろく)勅版」といわれるものであるが、書物そのものの伝存は知られていない。同天皇の出版事業は、慶長(けいちょう)時代(1596~1615)に入るとさらに活発となり、1597年(慶長2)には『錦繍段(きんしゅうだん)』『勧学文(かんがくぶん)』、99年には『日本書紀』神代巻、『古文孝経』『大学』『中庸』『論語』『孟子(もうし)』『職原抄(しょくげんしょう)』、1603年には『白氏五妃曲(はくしごひきょく)』、ほかに『長恨歌(ちょうごんか)・琵琶行(びわこう)』『陰虚本病(いんきょほんびょう)』(以上刊記未詳)などが相次いで刊行された。これらは「慶長勅版」と称されている。なお、『陰虚本病』は、現在ただ1本のみ知られているが、同書については勅版所用の活字による印刷であるから勅版であるとする説と、整版(せいはん)(版木(はんぎ)による印刷)であるから勅版とはしないという意見がある。後陽成天皇に次いで後水尾天皇は1621年(元和7)に『皇朝類苑(こうちょうるいえん)』を刊行した。これは「元和(げんな)勅版」と称されている。同書は従来より銅活字本といわれていたが、近年木活字本とする説もある。勅版の出版部数は明らかでないが、『慶長日件録(けいちょうにっけんろく)』などの記録によって100部前後と考えられる。出版の後は、近侍学者、諸社寺などに下賜された。

[金子和正]

『鈴鹿三七編『勅版集影』(1930・小林写真製版所出版部)』『川瀬一馬著『増補古活字版之研究』(1967・日本古書籍商協会)』


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図書館情報学用語辞典 第5版 「勅版」の解説

勅版

天皇の出版物.日本の勅版は,江戸初期の後陽成,後水尾両天皇の刊行されたもののみである.後陽成帝(1571-1617)は,秀吉によって朝鮮から伝来された銅活字で,1593(文禄2)年に『古文孝経』1冊を作ったことが記録されている.この勅版を文禄勅版というが,今日に伝わらない.その後,後陽成帝は,大型木活字により,1597(慶長2)年から1603(慶長8)年にかけて,『勧学文』,『日本書紀神代巻』を始め数点を出版した.それらを慶長勅版という.さらに後水尾帝(1596-1680)は,銅活字で,1621(元和7)年に『皇朝類苑』15冊を刊行した.これを元和勅版というが,いずれも堂々とした版式で,勅版の名にふさわしい出版物である.

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百科事典マイペディア 「勅版」の意味・わかりやすい解説

勅版【ちょくはん】

日本・中国で天皇または皇帝命令で出版された図書。日本では16世紀末―17世紀初めの後陽成天皇の文禄勅版や慶長勅版,初めて銅活字を用いた後水尾天皇の元和勅版の3種。中国では四庫全書が最大の勅版。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「勅版」の意味・わかりやすい解説

勅版
ちょくはん

天皇の命令によって出版された書籍。後陽成天皇勅版の『日本書紀神代巻』 (1599,古活字版) ,『論語』『孟子』 (99) や後水尾天皇勅版『皇朝類苑』 (1621,銅活字版) などが有名。

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