天皇の勅命によって刊行された書物のことで、とくに後陽成(ごようぜい)天皇、後水尾(ごみずのお)天皇が刊行した十数種の活字印本をいう。16世紀末に朝鮮より伝来した活字印刷技術は、わが国の出版事業に大きな影響を与えた。この印刷法で最初に刊行された活字本が、1593年(文禄2)の後陽成天皇勅版『古文孝経(こぶんこうきょう)』で、「文禄(ぶんろく)勅版」といわれるものであるが、書物そのものの伝存は知られていない。同天皇の出版事業は、慶長(けいちょう)時代(1596~1615)に入るとさらに活発となり、1597年(慶長2)には『錦繍段(きんしゅうだん)』『勧学文(かんがくぶん)』、99年には『日本書紀』神代巻、『古文孝経』『大学』『中庸』『論語』『孟子(もうし)』『職原抄(しょくげんしょう)』、1603年には『白氏五妃曲(はくしごひきょく)』、ほかに『長恨歌(ちょうごんか)・琵琶行(びわこう)』『陰虚本病(いんきょほんびょう)』(以上刊記未詳)などが相次いで刊行された。これらは「慶長勅版」と称されている。なお、『陰虚本病』は、現在ただ1本のみ知られているが、同書については勅版所用の活字による印刷であるから勅版であるとする説と、整版(せいはん)(版木(はんぎ)による印刷)であるから勅版とはしないという意見がある。後陽成天皇に次いで後水尾天皇は1621年(元和7)に『皇朝類苑(こうちょうるいえん)』を刊行した。これは「元和(げんな)勅版」と称されている。同書は従来より銅活字本といわれていたが、近年木活字本とする説もある。勅版の出版部数は明らかでないが、『慶長日件録(けいちょうにっけんろく)』などの記録によって100部前後と考えられる。出版の後は、近侍や学者、諸社寺などに下賜された。
[金子和正]
『鈴鹿三七編『勅版集影』(1930・小林写真製版所出版部)』▽『川瀬一馬著『増補古活字版之研究』(1967・日本古書籍商協会)』
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