ブドウ糖の一部を異性体である果糖に変化させて得られる混合糖。この言葉は学術用語として,貝沼圭二・鈴木繁男が1964年に用いた〈isomerized sugar〉の訳で,そのまま普通名詞として現在使われている。異性化の目的は,ブドウ糖の甘み増強にあり,果糖含量が42%のものと55%のものが現在市販されている。現在の工業的製法は,グルコースイソメラーゼを固定化して,反応容器に充てんして,この中をブドウ糖溶液を通す。このようにして1~2時間の反応でブドウ糖の42%が果糖に変化するものである。異性化糖の原料は,デンプンであり,デンプンから砂糖の代替品を作るという目的で,砂糖輸入国の日本で研究が著しく進んだ。しかし現在は,国産のデンプンよりは,輸入のトウモロコシを原料とするコーンスターチから作られている。異性化糖は,砂糖より低価格のデンプンを原料とするデンプン糖の一種で,砂糖よりも安価なため,甘みのみが求められる多くの用途で砂糖に代替されつつある。この糖は,果糖の甘みを利用しているので,低温で甘みが強く,高温で弱くなる。このような性質のために,清涼飲料,乳酸飲料,冷菓,缶詰,洋菓子,パンなどに広く利用されている。表示は〈異性化糖〉と書くこともあるが〈ブドウ糖・果糖液糖〉,あるいは〈果糖・ブドウ糖液糖〉などと書くこともできる。
執筆者:貝沼 圭二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
糖類の一種で、ブドウ糖の一部を主として、酵素によって果糖に異性化したもの。原料としてデンプンを加水分解したブドウ糖液、あるいは砂糖液の加水分解液を使用し、これに異性化酵素(イソメラーゼisomerase)を作用させて果糖を増加させたものである。果糖はブドウ糖や砂糖よりも甘味度が強く、甘味の質もよい。したがって甘味度の高い、味のよい糖類をつくることができる。また、甘味度が高くなるので、使用糖類の量を減らすことができる。ブドウ糖から果糖への異性化度の差により、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖など、各種の異性化液糖がつくられ、JAS(ジャス)(日本農林規格)によって規格化されている。清涼飲料水、缶詰の糖液、冷菓、ゼリー菓子、そのほか菓子類に多く使用される。
[河野友美・山口米子]
…液状糖ともいい,内容物によって次のような種類がある。(1)全砂糖液糖,(2)転化糖液糖,(3)両者の混合液糖,(4)濃厚砂糖溶液にブドウ糖を加えたもの,(5)異性化糖と砂糖溶液の混合したもの,(6)異性化糖など。固形糖に比較すると,製造の際に糖液精製後の結晶化,分離,乾燥,包装などの工程が省力できる。…
…果糖は吸湿性が高いので,ケーキ,カステラなどの砂糖の晶出防止にも用いられる。最近,デンプンを加水分解して得たブドウ糖にグルコースイソメラーゼ(ブドウ糖異性化酵素)を作用させて,ブドウ糖の一部を果糖に変えて甘みを増強した異性化糖が新しい甘味料として登場し,幅広く用いられている。【貝沼 圭二】。…
※「異性化糖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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