異物・嗜好品と消化管障害

内科学 第10版の解説

異物・嗜好品と消化管障害(薬物・異物と消化管)

定義・概念
 消化管異物は,通常存在しないものが消化管に停滞する病態である.自然に排泄される異物であれば治療の適応はないが,形状,大きさ,成分によっては早急に摘出する必要があるため,異物を緊急性の有無により大別する分類が一般的である(表8-12-3).多くの消化管異物は自然排泄されるが,場合により潰瘍形成,消化管出血,穿孔,消化管閉塞を引き起こす.また,消化管粘膜傷害のリスクのある嗜好品として,高濃度アルコールや激辛食品などは急性胃粘膜病変を起こしうる.
病態生理
 鋭利な異物は消化管壁を損傷し穿孔をきたす.ビニール袋,胃石などの大きな異物は消化管での停滞,圧迫により,壊死,潰瘍形成,穿孔をきたし,通過障害により腸閉塞を起こす.内容物が消化管に被曝すると,生体に重篤な影響を及ぼす異物として,マンガン電池,アルカリ電池はアルカリを生じ,ボタン電池は内容の漏出をきたす.
臨床症状
 異物の嚥下あるいは誤嚥の問診が重要である.嚥下困難,嚥下痛があれば,食道異物を疑う.頸部,鎖骨上窩の腫脹,圧痛は,咽頭,食道の穿孔を示唆する.消化管の潰瘍形成により腹痛,消化管出血をきたし,穿孔により腹痛など腹膜刺激症状,腸閉塞では嘔吐,腹痛,排ガス・排便の停止をきたす.
診断
 頸部,胸部,腹部の単純X線撮影(正面像と側面像)を行い,異物の形状と部位,陥入など停滞の状態,穿孔,腸閉塞の有無を確認する.X線透過性のある異物では,ガストログラフィンによる造影検査を行う.バリウム造影は行わない(のちの内視鏡治療時の視野確保の支障となり,穿孔では禁忌).
治療
 食道内異物は何らかの症状を伴うことが多く,内視鏡的摘出を行う.特に鋭利な異物,ボタン電池は穿孔の危険性が高く,緊急に摘出する.閉塞を起こしうる異物では食道での停滞により圧迫壊死,穿孔に留意する.食道穿孔時は外科手術の適応である.胃に自然に進んだ異物は,時間の経過とともに十二指腸に排出されることが多いが,鋭利な異物,ボタン電池は穿孔の危険があり,胃内にとどまるうちに摘出する.幽門輪を通過すれば自然排出されることが多いが,異物の種類により穿孔,腸閉塞が出現すれば外科手術の適応である.
 合併症なく自然排出されることが多いが,必要に応じて内視鏡的治療や外科手術を行う.[平石秀幸]
■文献
赤松泰次,他:異物摘出術ガイドライン.消化器内視鏡ガイドライン,第3版(日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会編),pp206-214,医学書院,東京,2006.
渕上忠彦,他:異物摘出術ガイドライン.消化器内視鏡ガイドライン,第2版(日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会編),pp194-203,医学書院,東京,2002.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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