台記(読み)タイキ

デジタル大辞泉 「台記」の意味・読み・例文・類語

たいき【台記】

平安時代の公卿藤原頼長日記。12巻。保延2年(1136)から久寿2年(1155)までの部分現存鳥羽院政期の基本史料。宇治左府記。宇左記。宇槐記。槐記。治相記。

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精選版 日本国語大辞典 「台記」の意味・読み・例文・類語

たいき【台記】

  1. 院政期の漢文日記。左大臣藤原頼長著。保延二年(一一三六)から久寿二年(一一五五)までの分が現存するが、中間に欠逸部分が多い。鳥羽院政期政治史の基本資料で、保元の乱の原因となった兄忠通との対立関係、当時の人物群像、宮中儀式などについて生彩ある記述がみられる。宇槐記・宇左記・槐記・治相記などともいう。

だいき【台記】

  1. たいき(台記)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「台記」の意味・わかりやすい解説

台記
たいき

左大臣藤原頼長(よりなが)の日記。「宇槐記(うかいき)」「槐記」「宇左記」「宇治左府記」「治相記(じそうき)」ともいう。『台記』という書名は大臣の唐名三台(さんだい)に由来する。槐(槐樹槐門)も大臣の異称。頼長17歳の1136年(保延2)から55年(久寿2)の間が、若干の欠落を伴いながら現存する。本書の記述は、頼長の和漢典籍への深い造詣(ぞうけい)と文筆力に支えられて、明晰(めいせき)かつ個性的であり、単なる儀式の記録を超えて、政治や社会事象に対する頼長独特の判断が積極的に語られているところに特徴がある。頼長自身の波瀾(はらん)に富んだ生涯はもとより、陰り始めた当時の摂関家(せっかんけ)内部の複雑な状況、貴族社会の構造や人間関係、鳥羽(とば)院政の実体やそれをめぐる貴族の動向、寺社、武士、庶民を含む世相の特徴などを知る格好の素材となっている。自筆本は現存しないが、鎌倉時代の古写本(一部分)を最古とし江戸時代まで各種の写本が伝存し、三条西公条(さんじょうにしきんえだ)が本書を抄録した『宇槐記抄』も存在する。なお頼長は、とくに重要な儀式関係記事については別記(べっき)をつくっており、これも各種写本として伝えられている。『史料大観』『史料大成所収

[義江彰夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「台記」の意味・わかりやすい解説

台記 (たいき)

左大臣藤原頼長の日記。《槐記(かいき)》《宇槐記》《宇治左府記》などとも呼ぶが,これらは大臣の唐名〈三台〉〈三槐〉,もしくは頼長の居所,官職に由来する。記事は生彩に富み,深い学殖に裏打ちされて詳細かつ精確である。1136年(保延2)より55年(久寿2)までの写本が伝わるが,中間を一部欠く。また本記の記事を後世に抄出した《宇槐記抄》《台記抄》,および別記も伝わるが,《宇槐記抄》《台記抄》には今日散逸した本記の記事が含まれている。東京大学史料編纂所,宮内庁書陵部,内閣文庫,尊経閣文庫などに古写本を伝える。《増補史料大成》《史料纂集》などに収める。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「台記」の意味・わかりやすい解説

台記
たいき

『宇槐記』『宇左記』『宇治左府記』『治相記』などとも呼ばれる。平安時代後期の貴族政治家藤原頼長の日記。原本は伝わらないが,鎌倉時代初期の古写本をはじめとする諸写本や,永正 14 (1517) 年三条西公条 (きんえだ) が抄録した『宇槐記抄』などから,断続的ながら,保延2 (1136) ~久寿2 (55) 年間の記事が求められる。頼長は摂関家に生れ,左大臣に上ったが,兄忠通と対立し,保元の乱で敗死したので,保元の乱までの政治情勢が『台記』でわかる。また彼の学問好きな一面から,漢籍が頻出し,当時の貴族の教養を具体的に示してくれる。

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百科事典マイペディア 「台記」の意味・わかりやすい解説

台記【たいき】

左大臣藤原頼長の日記。12巻1冊。《槐(かい)記》《宇槐記》《治相(ちしょう)記》などとも。1136年―1155年までの写本が部分的に伝わる。保元(ほうげん)の乱に関する好史料。

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旺文社日本史事典 三訂版 「台記」の解説

台記
たいき

平安末期,左大臣藤原頼長の日記
『宇槐記』『宇左記』『治相記』などともいう。1136〜55年の間が部分的に現存する。記事詳細で,保元の乱に至るまでの政治情勢の重要史料。

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世界大百科事典(旧版)内の台記の言及

【藤原頼長】より

…しかし55年(久寿2)近衛天皇の死去を機として,鳥羽法皇の信任を失い,さらに後白河天皇の践祚(せんそ)により皇子の践祚の望みを断たれた崇徳上皇と手を結び,56年法皇の没後間もなく兵を挙げたが,敗れて南都に逃れ,戦場でうけた重傷のため命を落とした。その日記《台記》は,生彩に富んだ公家日記として名高い。保元の乱【橋本 義彦】。…

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