日本大百科全書(ニッポニカ) 「坐薬」の意味・わかりやすい解説
坐薬
ざやく
医薬品を基剤と混合して一定の形に成形し、肛門(こうもん)、腟(ちつ)、尿道に挿入する固形の外用剤。坐剤。基剤としては、体温で融解して薬物を放出するカカオ脂やウィテップゾールなどの油脂性のものと、体液で徐々に溶解して薬物を放出するグリセロゼラチンやマクロゴールなどの水溶性のものがある。尿道坐薬はほとんど使用されなくなり、また、腟坐薬は腟錠にとってかわられたといってよい。したがって坐薬の主流は肛門坐薬であり、これにはゼラチンの軟カプセルを用いたものまで出現している。肛門坐薬は円錐(えんすい)形または紡錘形で、肛門に挿入しやすい形になっている。これには、痔疾(じしつ)の治療や便秘の治療のための局所作用を利用したものと、直腸から薬物を吸収させてその全身作用を利用する解熱鎮痛剤、鎮静剤、化学療法剤などがある。ロートエキス・タンニン坐剤、複方ロートエキス・タンニン坐剤や局所麻酔剤、収斂(しゅうれん)剤、副腎(ふくじん)皮質ホルモン含有の痔疾用坐薬、浣腸(かんちょう)用グリセリン坐薬などは局所作用を利用したものである。全身作用を利用したものにはインドメタシン坐薬、スルピリン坐薬、アミノピリン坐薬、アミノフィリン坐薬などがある。徐々にではあるが、全身作用を利用した坐薬の使用が増加している。
[幸保文治]