技芸の諸道で行われた伝授の方式で、多年の稽古(けいこ)修業の功成(な)り、師家から流儀の奥義、秘事口伝(ひじくでん)などを伝授されて、相伝の証状(免状)を授与されること。免許皆伝ともいう。中世に成立した書、和歌、連歌、能楽、花、茶などの諸芸道では、それぞれの伝授方式をたてたが、父子相伝という世襲制から実力主義の師弟相伝へと移行拡大していくのが一般的傾向であった。近世初頭に成立した流派武術でも、それぞれの流祖や先師らが創意工夫した技法や術理を組み立てて、形(かた)、切組(きりぐみ)、習(ならい)などに体系化し、初伝(切紙(きりがみ))、中伝(目録)、極意(免許)、皆伝(印可)など数次の段階を設け、それぞれの誓詞を差し出させて、証状を授与した。なかには、皆伝者にも教授の範囲を制限して指南(しなん)免許の発行権を宗家(そうけ)が掌握したり、一子相伝の秘事を設けて宗家相続者に限定するものもあったが、幕末には新流が台頭して、多層化した相伝方式を簡素化し、武術本来の姿に近づけようとする動きが強まった。
[渡邉一郎]
『桑田忠親著『日本の芸道六種』(中公新書)』▽『渡邉一郎著『式芸・修業』(『日本古文書学講座8 近世編Ⅲ』所収・1980・雄山閣出版)』
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