改訂新版 世界大百科事典 「直紡」の意味・わかりやすい解説
直紡 (ちょくぼう)
direct spinning
直接紡績の略。スパンレーヨンなどの製造において,数千本ないし数万本の長繊維束をゆるいロープの形にして巻いたトウtowを切断して,綿状のステープルファイバーにし,繊維を平行に並べ,伸ばし,撚り(より)をかけて精紡する。直紡においては,繊維をそろえて平行に並べて伸ばすカーディング操作が省略される。たとえば,トウからトップ(紡績原料)を作るには直紡機の一種であるパシフィックコンバーターが用いられる。この機械によって次のような操作でトップが作られる。(1)ビスコース,アセテート,あるいはダイネルのトウは12万~19万デニール(5デニール×24000~38000フィラメントのこと)で供給され,平たんなウェッブweb(外観がクモの巣のような薄い皮膜の繊維)の形にされる,(2)ウェッブはローラーの間を通るが,合成繊維の場合はここで延伸がかけられる,(3)ウェッブはローラー型のカッターによって,進行方向に対して約10度の角度で斜めに7.5~15cmのある決まった長さに切断される,(4)切口を引き離し,切断された繊維束の上部と下部をローラーによってずらす,(5)繊維束を巻いて,撚りをかけてない繊維束であるスライバーを作る,(6)スライバーを円筒形に巻き上げてトップを作る。直紡によって多くの工程が省略されるうえに,均一で約20%強さの増した糸を得ることができる。
→織機
執筆者:瓜生 敏之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報