省諐録(読み)せいけんろく

精選版 日本国語大辞典 「省諐録」の意味・読み・例文・類語

せいけんろく【省諐録】

  1. ( 「諐」は罪過の意 ) 江戸後期の漢詩文集。一巻、付録二巻一冊。佐久間象山著。安政元年(一八五四著者が弟子吉田松陰の密航事件に連座して獄中にあったときの感慨思索を出獄後に記したもの。学問論、時局論など五七条と、詩歌短文を収める付録とから成る。象山思想精髄を示すもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「省諐録」の意味・わかりやすい解説

省諐録 (せいけんろく)

幕末の思想家佐久間象山(さくましょうざん)著書。1854年(安政1)成稿。象山は54年に弟子吉田松陰の密航失敗に連坐して,江戸で投獄されたが,本書は獄中の感懐を出獄後に筆記したものである。内容は多岐にわたるが,それまで海防問題に専心し,海外事情に関する知識の普及と西洋科学技術の導入に奔走してきた自己の思想と行動の正当性を主張した部分が中心をなす(題名はあやまちを省みる記録という意味)。有名な〈東洋道徳・西洋芸術〉の言葉も本書に出ている。《日本思想大系》,岩波文庫などに所収。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「省諐録」の意味・わかりやすい解説

省諐録
せいけんろく

幕末の先覚者佐久間象山(しょうざん)著の随想録。一巻、付録二巻。1854年(安政1)、門人吉田松陰(しょういん)の密航失敗事件に連座して江戸伝馬町(てんまちょう)の獄につながれていたときの感懐を、出獄後に筆録したもので、71年(明治4)、勝海舟(かつかいしゅう)の序文を付して初めて刊行された。書名は諐(あやまち)を省みた記録という意味であるが、自責の念などはほとんど認められず、自己の思想と行動が正当化され、他への批判が前面に押し出されている。学問、海防、時事などを論じた57条の本文と、短文、詩歌を収めた付録からなり、象山の思想の精髄が示されている。象山の知的世界を象徴する有名な「東洋の道徳、西洋の芸術(技術)」ということばも本書のなかにみえる。

石毛 忠]

『飯島忠夫訳注『省諐録』(岩波文庫)』『松浦玲編・訳『佐久間象山』(1972・中央公論社)』

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