検非違使(けびいし)の下級職員で,獄直や追捕に従事。身分は火長。《弘仁式》で定員2と定められ,これは貞観・延喜式制に継承されているが,その後しだいに増員され,1035年(長元8)の〈看督長見不注進状〉では左右あわせて16人を数える。検非違使の武力は尉を中心とした比較的大規模な部隊編成を伴うものと京中を巡回する小規模なそれとがあるが,後者を代表するのが看督長で,少数の従者を率いることがあった。検非違使庁の権勢を笠に着て不当な捜査,追捕や乱暴な行動を行うことが珍しくなく,京中の人から頼られる一方で恐れられもしていた。赤狩衣,白衣,布袴を着け,白杖を持っていた。勅勘の所に看督長の靫(ゆき)をかけ出入りを禁ずるという強制執行を行うことがあり,このことが看督長は悪鬼魔神を慴伏(しようふく)するという信仰を生み,《徒然草》には天皇御悩のとき疫神を調伏するため五条の天神に靫をかけるということがみえている。《神道名目類聚抄》には,後世守門の神を看督長と称したとある。
執筆者:森田 悌
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…左右衛門府職員が〈使の宣旨〉により兼任するのが原則で,弘仁左右衛門府式では定員を左右それぞれにつき官人1,府生1,火長5と定め,貞観・延喜式では左右それぞれ佐1,尉1,志1,府生1,火長(かちよう)9に増員し,834年(承和1)には別当が置かれている。火長は看督長(かどのおさ),案主,官人従者などからなり,式にはみえないが,火長の下に下部と称する下輩が置かれていた。佐の定員は時代が下っても式制どおり左右各1であるが,尉以下の職員については,必要に応じ増員が図られている。…
※「看督長」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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