…いわば映画そのものが早すぎる死を予感していたかのように,中期以降の作品にはつねに死の影が漂っていた。とくに《眠狂四郎》シリーズ(1963‐69)では,端正な容姿が主人公の出生の秘密による虚無感と孤独感で影を帯び,あやしい美しさの魅惑を放ったが,そこには市川雷蔵自身の出生の複雑さと生い立ちの転変が影を落としているのかもしれない。京都市に生まれたこと以外,実父母のことなどは明らかにされておらず,誕生の翌年,歌舞伎俳優市川九団次の養子となって竹内嘉男を名のり,大阪府立天王寺中学に学び,1946年,市川莚蔵の名で歌舞伎の初舞台を踏んで,51年,関西歌舞伎の長老,市川寿海の養子となり,8世市川雷蔵を襲名した。…
※「眠狂四郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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