翻訳|epiphyte
他の植物の地上部の表面に生育して独立栄養を営む植物(ヤドリギのように他の植物の組織の内部にまで侵入してそれから養分を摂取するものは寄生植物であり着生植物とは呼ばない)。なお,広い意味では露出した岩石の表面に付着して生育する植物をも含める。特に熱帯地域に豊富に産し,被子植物ではラン科,サトイモ科,パイナップル科をはじめ多くの科に見られ,樹上の生活に適応した特殊な形態をもつものが多い。ラン科やサトイモ科の着生植物には根の表面にしばしば根被velamenという貯水組織が発達している。パイナップル科では葉の基部が密に重なって〈タンク〉を形づくり,その中に水や腐植質をたくわえる。シダ植物にも着生植物は多い。ビカクシダやハカマウラボシでは2種類の葉をもち,その1種ははかま状に樹幹を抱いて水や腐植質の集積や保持に役だっている。地衣類や蘚苔(せんたい)類には着生植物がひじょうに多く,中には常緑の葉の表面に生育するものさえある。なお,着生植物という用語は,ホンダワラ類の植物体上に生育するモズクのような水中の植物に対しても用いられることがある。
執筆者:北川 尚史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
生きている植物の樹幹や樹枝、あるいは露出している岩上などに固着する植物をいう。コケ類、地衣類、藻類のほか、シダ植物(ノキシノブ、イワヒバ)、ラン科植物などに多くみられるが、その他の高等植物でも散見される。着生植物の固着する場所は土壌に比べて乾燥しやすいため、植物体は含水量が低下しても枯死しない、あるいは水分の保持に好都合となる体制をもっている。こうした着生植物の生育環境は競争が生じにくいという特徴があるため、競争に弱い植物が着生という生活を選んだとも考えられる。しかし、多雨地で乾燥しにくい所では着生植物の種類、量は著しく増加する。また、着生植物は大気汚染の指標植物となる。
[延原 肇]
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…多年生植物については,地上部が残るか残らないかを,越冬芽(耐乾芽など,植物の生活にとって不適当な条件を切り抜けるための抵抗芽一般を含む)が地表面からどれくらいの高さにあるかによって区別する。ラウンケルの生活形を整理すると,まず,地上植物(芽が地表より30cm以上高いもの),地表植物(芽の位置が地表30cmより低いもの),半地中植物(芽が地表にあるもの),地中植物(芽が地中にあるもの),夏緑性一年生植物(不適な時期を種子で過ごすもの)の区分ができ,さらに地上植物は,芽の位置が地表から30m以上の高さのもの(巨大地上植物),8~30mの高さのもの(大型地上植物),2~8mの高さのもの(小型地上植物),0.3~2mの高さのもの(矮小(わいしよう)地上植物)や,多肉植物,着生植物などに,地中植物は土中植物,水生植物などが区別されている。ラウンケルはこの類型化をもとにして,世界のさまざまの地域に生育する植物各1000種を無作為に選び出し,類型化された生活形がそれぞれどのような割合で分布しているかをパーセントで示した生活形標準表normal spectrum of life formを作成した。…
※「着生植物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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