改訂新版 世界大百科事典 「ビカクシダ」の意味・わかりやすい解説
ビカクシダ
Platycerium
コウモリランともいう。温室などでしばしば栽培される,ウラボシ科の常緑多年生シダ植物。狭義にはP.bifurcatum C.Chr.をさすが,園芸などではこの属(約18種および多数の園芸品種を含む)の植物の総称として使われることも多い。いずれも樹幹などに着生する中型から大型の植物で,短い根茎に相接してつく葉に2型あり,鱗状に変形した葉は腐葉土などを集める特異な形態の分化を遂げている。もう1種の葉は二叉(にさ)分岐をくりかえし,その裏面に胞子囊がつくが,特定の集りとはならない。ビカクシダの場合,鱗状の葉は長さも幅も30cmまで,胞子囊をつける葉は長さが1mに近づくこともある。葉には一面に星状毛がつく。温室などでよく栽培されるものとしてはマレーシアからフィリピンにかけて分布するP.grande J.Sm.が有名である。栽培にあたっては,ヘゴ材に着生させたり,ミズゴケで鉢植えにする。ビカク(麋角)はオオシカの角で,胞子葉の形にちなむ。英名のelkhorn fern,staghorn fernも同様である。
執筆者:光田 重幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報