日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビカクシダ」の意味・わかりやすい解説
ビカクシダ
びかくしだ / 麋角羊歯
[学] Platycerium bifurcatum C. Chr. var. bifurcatum C. Chr.
ウラボシ科の熱帯性着生シダ。コウモリラン(蝙蝠蘭)ともいう。また属名のプラチケリウムの名でよばれることもある。基部に重なり合う円形葉は栄養葉で、水分や腐植質を蓄える。胞子葉は長さ40~60センチメートル、先端部の裏側に胞子を密生し、熟すと褐色になる。無霜地帯では戸外で育ち、乾燥地ほど栄養葉が木に密着する。オーストラリア東部原産。「麋(び)」はオオジカのことで、胞子葉の形がオオジカの角(つの)に似るので名がついた。コウモリランの名は、栄養葉の形をコウモリに見立てたものである。
プラチケリウム属は、アジア、アフリカ、オーストラリア、ポリネシアなどの熱帯地域に17種分布する。栄養葉の巨大なオオビカクシダP. grande(Fée)J. Sm. ex K. Preslや、胞子葉が長く垂れ下がるナガバビカクシダP. willinckii T. Mooreなどが観賞温室で栽培される。ヘゴ材につけて、吊(つ)り鉢にして観賞される。多くの種類は、高温多湿を好み、冬は10℃以上を維持する。繁殖は一般には一株の株分けによるが、このほか胞子葉による繁殖も可能である。
[高林成年]