(読み)ラン

デジタル大辞泉 「蘭」の意味・読み・例文・類語

らん【蘭】[漢字項目]

人名用漢字] [音]ラン(呉)(漢)
キク科の草の名。フジバカマ。「蘭草」
ラン科植物の総称。また、それに類したもの。「金蘭紫蘭春蘭鈴蘭すずらん葉蘭はらん木蘭君子蘭竜舌蘭
芳しく美しいものの美称。「芝蘭しらん
文書を扱う役所。「蘭台
梵語や外国語の音訳字。「阿蘭若あらんにゃ阿蘭陀オランダ
オランダ。「蘭医蘭学蘭書蘭方
[名のり]か
[難読]英蘭イングランド和蘭オランダ蘇格蘭スコットランド新西蘭ニュージーランド芬蘭フィンランド波蘭ポーランド蘭引ランビキ

らん【×蘭】

ラン科の単子葉植物の総称。約2万5000種が熱帯を中心に広く分布。地中に根をはる地生のほか着生腐生もあり、ふつう多年草。花びら・がくとも3枚ずつで、1枚は形や色の変化した唇弁となり、花形は左右相称。一般には観賞用のものをいい、産地により東洋ランと洋ランに分け、品種が多い。シュンランカンランカトレアなど。 秋》「―の香やてふのつばさにたき物す/芭蕉
紋所の名。1の花を図案化したもの。
フジバカマの別名。
和蘭オランダ」「阿蘭陀オランダ」の略。
[類語]洋蘭胡蝶蘭春蘭

らに【×蘭】

《「らん」の撥音「ん」を「に」と表記したもの》フジバカマの古名。
「―の花のいとおもしろきを給へりけるを」〈藤袴

あららぎ【×蘭】

イチイの別名。
ノビルの古名。
一根ひともとの―を採りて」〈北野本允恭紀〉

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精選版 日本国語大辞典 「蘭」の意味・読み・例文・類語

らん【蘭】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. ラン科の植物の総称。世界中に約二万種、日本にはシュンラン・カンラン・シランセッコクなど二〇〇種近くが知られる。花は独特な形態をしていて美しいものが多く、観賞用に栽培される。→蘭科
      1. [初出の実例]「蘭の香やてふの翅(つばさ)にたき物す」(出典:俳諧・野ざらし紀行(1685‐86頃))
    2. 植物「ふじばかま(藤袴)」の異名。《 季語・秋 》
      1. [初出の実例]「ふぢばかまとは、らんを云」(出典:能因歌枕(11C中))
      2. [その他の文献]〔易経‐繋辞上〕
    3. 植物、蘭(あららぎ)をいう。
      1. [初出の実例]「去仁和の比、讚州の任に下給しには、甘寧が錦の纜(ともづな)を解き、蘭(ラン)の橈(さを)・桂の檝、舷(ふなばた)南海の月に敲きしに」(出典:太平記(14C後)一二)
    4. 紋所の名。の花を一つあるいはいくつかを組み合わせて図案化したもの。三つ蘭の丸、向い蘭菱、蘭の花などがある。
      1. 三つ蘭の丸@向い蘭菱
        三つ蘭の丸@向い蘭菱
    5. ( オランダの服の意から ) 江戸の芝居仲間の通言で、着物をいう。
      1. [初出の実例]「『ぬしゃア芝居の事がくはしひから芝居のふちゃうを咄しねへ』『ちっと斗り咄しやせふ〈略〉きものを「らん」(出典:洒落本・品川楊枝(1799))
  2. [ 2 ] オランダのあて字「阿蘭陀」の略。
    1. [初出の実例]「其国都て七州、総称してネヰデルランドと云ふ。和蘭は其一なり、吾が輩単へに蘭と唱へ」(出典:蘭学階梯(1783)例言)

蘭の語誌

中国では、古くは「蘭」はキク科の香草で、多く「菊」と対で詠まれる。香嚢にして身につける蘭を「芷蘭(しらん)」といい、「芷蘭」は「蘭」の美称ともなった。「蘭」「芷蘭」ともに字音語でも行なわれた。日本でも上代から例がみられるが、総じて香りの高い植物をいったもので、種類を特定しにくい。


あららぎ【蘭】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 植物「のびる(野蒜)」の古名。
    1. [初出の実例]「圧乞(いで)、戸母(とじ)、其の蘭(アララキ)一茎(ひともと)」(出典:日本書紀(720)允恭二年二月(図書寮本訓))
  3. 植物「ふじばかま(藤袴)」の異名。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「はつ秋〈略〉蘭(アララキ)」(出典:至宝抄(寛永一一年本)(1634))
  4. 植物「いちい(一位)」の異名。《 季語・春 》

▼あららぎの実《 季語・秋 》


らに【蘭】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 植物「ふじばかま(藤袴)」の古名。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「らに あき風にかをのみそふる花なればにほふからにぞひとにつまるる」(出典:躬恒集(924頃))
  3. 「らん(蘭)」の変化した語。

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普及版 字通 「蘭」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 19画

(旧字)
21画

[字音] ラン
[字訓] ふじばかま

[説文解字]

[字形] 形声
声符は闌(らん)。〔説文〕一下に「香艸なり」とあり、春蘭は一茎一花、蘭(けいらん)は一茎数花。香気高く、文雅の士の愛するところであった。〔詩、風、(しんゐ)〕に「士(をとこ)と女と 方(まさ)にを秉(と)る」の〔箋〕に「なり」とあるのは、ふじばかま、蘭にも種類が多い。

[訓義]
1. らん。
2. ふじばかま。
3. 木蘭、もくらん。
4. 欄(らん)と通じ、刀かけ、さえぎる、おり。
5. (らん)と通じ、まだら。

[古辞書の訓]
和名抄 本、布知波加(ふぢばかま)。新集に別に袴の二字り 〔名義抄〕 フヂバカマ・アララギ・タケ・タク・カウバシ・ネヒル・ミダル・カカル・エラブ/大 ナデシコ・トコナツ/野 クロ・クサ・アリクサ/木 モクラン/澤 サハアララギ・アカマグサ/ カガミ

[熟語]
蘭郁・蘭英・蘭掖・蘭・蘭華・蘭舸・蘭・蘭・蘭儀・蘭菊・蘭玉・蘭薫・蘭契・蘭畦・蘭閨・蘭・蘭馨・蘭月・蘭検・蘭言・蘭交・蘭香・蘭黄・蘭皋・蘭芝・蘭子・蘭巵・蘭沚・蘭・蘭質・蘭麝・蘭舟・蘭秋・蘭渚・蘭署・蘭省・蘭章・蘭訊・蘭衰・蘭生・蘭性・蘭石・蘭船・蘭藻・蘭・蘭・蘭台・蘭亭・蘭汀・蘭殿・蘭灯・蘭湯・蘭若・蘭・蘭・蘭圃・蘭房・蘭芳・蘭舫・蘭盆・蘭夜・蘭
[下接語]
鬱蘭・蘭・玉蘭・金蘭・薫蘭・蘭・香蘭・皋蘭・芝蘭・紫蘭・春蘭・椒蘭・衰蘭・石蘭・叢蘭・沢蘭・竹蘭・汀蘭・芳蘭・夢蘭・木蘭・沐蘭・野蘭・友蘭・幽蘭・浴蘭

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「蘭」の解説

らん【蘭】

鹿児島芋焼酎。従来不可能といわれていた芋麹を用いた純芋焼酎。白麹仕込みと黒麹仕込みがある。原料はコガネセンガン、芋麹。アルコール度数25%。蔵元の「黄金酒造」は昭和24年(1949)創業。所在地は霧島市国分敷根。

出典 講談社[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクションについて 情報

デジタル大辞泉プラス 「蘭」の解説

蘭〔オートバイ〕

スズキが1983年から製造・販売したスクータータイプのオートバイ。総排気量45cc(原動機付自転車)。エンジン形式は空冷2ストローク単気筒。

蘭〔焼酎〕

鹿児島県、アットスター株式会社が製造・販売する焼酎。芋と芋麹を使用した全芋焼酎。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「蘭」の解説

蘭 (フジバカマ)

学名:Eupatorium fortunei
植物。キク科の多年草,園芸植物,薬用植物

蘭 (アララギ)

植物。イチイ科の常緑針葉高木,園芸植物,薬用植物。イチイの別称

蘭 (アララギ)

植物。ユリ科の多年草,高山植物。ギョウジャニンニクの別称

蘭 (ラン)

植物。ラン科の植物の総称

蘭 (アララギ・ラン)

植物。野蒜の古名

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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