家庭医学館 「睾丸捻転症」の解説
こうがんねんてんしょうせいそうねんてんしょうこうがんかいてんしょう【睾丸捻転症(精巣捻転症/睾丸回転症) Testicular Torsion】
睾丸(精巣)が陰嚢内(いんのうない)で栄養血管(精巣動脈、精索(せいさく)静脈など)を軸として回転する病気です。その結果、栄養血管がしめつけられて血液が流れなくなり、長時間放置すると睾丸が壊死(えし)してしまいます。
回転の方向は時計回りと反時計回りがあり、ひどい場合には、2回転も3回転もしていることがあります。12~18歳の思春期に多いのですが、新生児や成人にもみられます。
[原因]
原因は明らかではありませんが、睾丸を支えている付着部が狭いため、ねじれやすいと考えられています。思春期では、睾丸の容積が急激に5~6倍になるために、睾丸捻転が生じやすくなります。
[症状]
思春期の男子に、何の前ぶれもなく、睾丸が急に激しく痛み、腫(は)れてきます。ふつう熱はでません。腫れあがってくると発赤(ほっせき)し、急性副睾丸炎(きゅうせいふくこうがんえん)(急性精巣上体炎(きゅうせいせいそうじょうたいえん))と区別が困難になります。
新生児では、疼痛(とうつう)はなく、むずかったりするだけで明らかな症状が出ないため、診断が遅れがちになります。
[検査と診断]
触診だけで診断することは困難です。超音波によるカラードップラー検査が簡便であり、比較的正確に診断できます。そのほか、放射性アイソトープも有効ですが、高価で、時間もかかります。
懐中電灯で陰嚢を照らしても、光の透過性はありません。
●鑑別診断
もっともまちがえられやすいのが急性副睾丸炎です。急性副睾丸炎は成人、とくにお年寄りに多く、下腹部の不快感や発熱などの前駆症状をともないます。これに対して睾丸捻転は思春期に多く、発熱はなく、急激に発症します。その他、嵌頓(かんとん)ヘルニアや精巣腫瘍(せいそうしゅよう)との鑑別もたいせつです。
[治療]
症状が現われてから4~6時間以内に手術し、整復しなければ機能回復は望めません。24時間以上経過すると、確実に睾丸は壊死し、摘除しなければなりません。壊死に陥った睾丸をそのまま残すと、健康な睾丸の機能も低下するという説がありますが、まだ確立されてはいません。
24時間以内の場合には、回転を整復し、睾丸を固定して血流の回復を待つこともまちがいとはいえませんが、6時間を経過している場合には手遅れのことが多く、数か月後には睾丸は萎縮(いしゅく)し、大豆(だいず)大になります。
また、反対側の健康な睾丸にも同様な解剖学的異常があることが多いので、手術時には、健康な睾丸の固定が推奨されています。