ことわざを知る辞典「石の上にも三年」の解説
石の上にも三年
[使用例] 「辛かったですね。家とか土地とか、全部を処分すれば、ともかく三年間はやっていける。三年たってダメなら、諦めよう。石の上にも三年というから、三年間は頑張ろう、とね。親父も、母も、むろんわたしも、歯をくいしばる思いでやりました」経営が黒字に転化したのは二年目だった[田原総一朗*“異色”創業者の発想|1980]
[使用例] 今年も駄目だ。〈略〉これを限り、米はやめよう、と三郎は手の中の空の穂を捨てて言った。
やめますか。
七回目だからな。最初は明治二十一年だった。石の上にも三年という。七たび試みればもういいだろう。[池澤夏樹*静かな大地|2003]
[解説] 江戸初期には「石の上にも三年いれば温まる」といいました。この「いる」はすわるという意味です。一七世紀末頃から後半を略した現在の形がしだいに定着して、今日では、元の形はすっかり忘れられてしまいました。その結果、温まるイメージが浮かびにくくなり、長くがまんしていれば慣れると解釈する人も少なくありません。
用法として多いのは、就職や開業の際の心構えとして、ともかく三年は辛抱しようとするものです。また、夫と別れて実家に帰りたいという新妻に対して、仲人がなだめるときにもよく引かれていました。「三」は、一般に区切りとして意識される象徴的な数で、この場合も、「三年」は厳密な年数というより、新しい環境や仕事に慣れ、ゆとりの出てくる時期を示すものでしょう。
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