翻訳|calcicole
石灰岩地帯に多い植物。石灰岩地帯にのみ分布する石灰岩植物という狭い意味で使うこともある。石灰岩地帯にはほとんど分布しない植物を嫌石灰植物calcifugeというのに対して,好石灰植物ともいう。分布のしかたからみて,石灰植物にはイチョウシダ,クモノスシダのように石灰岩地帯には広く分布するが,それ以外ではみられず,石灰岩地帯に限られるものと,イワシデ,ヤマシャクヤクのように石灰岩地帯に多いが他の母岩にもみられるものがある。石灰植物のうちトダイハハコ,シライワコゴメグサなどは近縁植物とは変種程度の差しかなく石灰岩地帯で比較的新しく分化したものと考えられるが,チチブミネバリのように近縁植物がみられないものは分化が古い。
好石灰植物や嫌石灰植物が存在する要因としては,次のようなものが考えられている。(1)石灰岩はカルシウムに富み,ほとんどケイ素を含まないため,その土壌は一般にpHが中性~弱アルカリ性で,窒素は硝酸体が多く,鉄,マンガン,アルミニウムが少ない。このため,カルシウムは過剰に,カリウム,リン酸,鉄は不足になりやすく,それに対する耐性のない植物は生育できない(逆に酸性土壌では,鉄,マンガン,とくにアルミニウムの過剰障害を生じることがある)。(2)石灰岩土壌は一般に通気性がよく,乾燥しやすく,暖まりやすい。このため,温暖・乾燥の地中海地方ではケイ酸質土壌に生育しているアカブナなどが,低温・湿潤なその北方地域になると,石灰岩地帯に限ってみられることがある。(3)他の地域で優勢な植物が石灰岩地帯で劣性になるための影響。日本の石灰岩地帯での例としては,暖温帯林で極相種のシイを欠くために遷移の途中相のアラカシなどが優占する場合や,冷温帯林で林床に優占するササを欠くため,その林床にササの生育しない岩礫地・渓谷に多い多年生草本が多くなる場合が挙げられる。
執筆者:藤田 昇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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