自然発火(読み)しぜんはっか(英語表記)spontaneous combustion; spontaneous heating

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

自然発火
しぜんはっか
spontaneous combustion; spontaneous heating

空気中で石炭,鉱石などが酸化作用のため自然に発火すること。石,硫化鉱などの破砕面,特に堆積粉体は空気中の酸素を吸着し酸化する性質があり発熱するが,これを冷却しなければ次第に温度が上昇し,ますます酸素を吸収してついに自然に発火するようになる。このような自然発火現象坑内はもとより坑外貯鉱 (炭) 場などにおいてもしばしばみられる。坑内における自然発火は坑内火災,有毒ガス中毒の原因となり,特に炭鉱坑内ではガス爆発を誘発するおそれもあり,その防止は保安上きわめて大切である。

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百科事典マイペディアの解説

自然発火【しぜんはっか】

物質が空気中で常温で自然に発熱し(酸化その他の原因による),その熱が蓄積され,ついに発火・燃焼するに至る現象。たとえばセルロイドでは主成分のニトロセルロースが自然に分解し,生成した硝酸などによって酸化されて発熱し,ついには自然発火に至る。その他黄リン,ゴム類,原綿,枯草,石炭など自然発火を起こしやすく,火災の原因となる。

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世界大百科事典 第2版の解説

しぜんはっか【自然発火 spontaneous ignition】

可燃性物質と空気または他の酸化剤の混合系を加熱したとき,自然にをあげて燃えはじめる現象。口火による発火(引火pilot ignition)とともに燃焼開始の主要な形式である。自然発火の挙動は物質の種類や状態,加熱条件などによって多少変わるが,その発生の仕組みは,多くの場合,混合系内部における酸化,分解,重合などの化学反応による発熱と,外部への放熱の釣合いの基礎の上に説明できる。したがって,自然発火が起こるためには,混合系内の蓄熱過程が重要な役割を果たし,反応熱,加熱温度,混合系の規模と熱物性などが発火に大きな影響をもつ。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

自然発火
しぜんはっか
spontaneous ignition

酸素や空気中で可燃性物質を加熱した場合、ほかから口火を与えられなくてもひとりでに炎をあげて燃えることをいう。引火点や燃焼点よりも高い温度に加熱された場合におこるが、いろいろの条件によって自然発火のおこる温度(発火点)は大きく異なる。

 自然発火のためには蓄熱の過程が重要である。石炭や原綿などを大量に堆積(たいせき)すると、常温よりわずかに高い温度でも長時間放置すると内部に熱が蓄積して、中心部では温度が上昇しやがて自然に発火する。高温の場合は内部からの蓄熱の必要性は小さいから、発火は表面近くでおこるし、発火までの時間も短い。黄リンや金属カリウムなどは、室温の空気中でも自然に発火するが、これはいずれも表面の反応である。したがって黄リンは水中に、金属カリウムは石油中に貯蔵して表面を空気に触れさせなければ安全である。

[山崎 昶]

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精選版 日本国語大辞典の解説

しぜん‐はっか ‥ハックヮ【自然発火】

〘名〙 他から直接点火されず、大気中で物質が自然に燃焼を開始する現象。黄燐、燐化水素など、空気に触れると酸化されやすい有機物が、次第に酸素を吸収して発熱し、やがて自然発火温度に達して燃えだすもの。〔電気工学ポケットブック(1928)〕

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化学辞典 第2版の解説

自然発火
シゼンハッカ
spontaneous ignition

酸素または空気中で可燃性物質を加熱したとき,みずから炎をあげて燃えはじめる現象を自然発火といい,口火による発火(pilot ignition)と区別する.発火の機構は物質の種類や状態,加熱条件などによっていちじるしく変わるが,多くの場合,反応による発熱と放熱の釣合いに基礎を置いた熱理論で説明できる.したがって,自然発火が起こるためには,蓄熱の過程が重要な役割を果たし,発熱量,加熱温度,試料の大きさなどが大きな影響をもつ.もともと,自然発火の現象は加熱温度の高低で相違することはないが,これが高いと反応が早く,内部での蓄熱は必要性が薄いので,発火に至る時間は短く,また発火は表面近くで起こる.これに対し,加熱温度が低いと蓄熱の必要性が増し,そのため発火時間は長く,発火位置は中心に移る.石炭や原綿などが多量に堆積したときに,常温より少し高い温度で長時間かけて起こる自然発火は後者の代表的な例である.

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