硝酸鉄(読み)ショウサンテツ(その他表記)iron nitrate

デジタル大辞泉 「硝酸鉄」の意味・読み・例文・類語

しょうさん‐てつ〔セウサン‐〕【硝酸鉄】

鉄の硝酸塩
硝酸鉄(Ⅱ)(硝酸第一鉄)。六水和物または九水和物が普通。淡黄色の結晶化学式Fe(NO32
硝酸鉄(Ⅲ)(硝酸第二鉄)。六水和物または九水和物が普通。淡紫色の結晶。媒染剤・なめし剤などに用いる。化学式Fe(NO33

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精選版 日本国語大辞典 「硝酸鉄」の意味・読み・例文・類語

しょうさん‐てつセウサン‥【硝酸鉄】

  1. 〘 名詞 〙 鉄の硝酸塩。二価の鉄の塩は六水塩と九水塩が知られている(化学式 Fe(NO3)2)。三価の鉄の塩の六水塩は無色、九水塩は無色または淡紫色結晶(化学式 Fe(NO3)3)。媒染剤、なめし剤、顔料原料、医薬品利用。〔薬品名彙(1873)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「硝酸鉄」の意味・わかりやすい解説

硝酸鉄 (しょうさんてつ)
iron nitrate

酸化数Ⅱおよび酸化数Ⅲの鉄の硝酸塩が知られている。

化学式Fe(NO32・6H2O。無水和物は得られていない。鉄あるいは硫化鉄(Ⅱ)を冷希硝酸に溶かすと得られる。淡黄色板状晶。斜方晶系。融点60.5℃。冷時湿った状態では安定。母液を完全にとり去ると速やかに暗赤色の塩基性硝酸鉄(Ⅲ)に変わる。-12℃以下では9水和物が安定。水に易溶,溶解度300g/100g(25℃)。水溶液酸性で,加熱すると塩基性硝酸鉄(Ⅲ)になる。

化学式Fe(NO33・9H2O。鉄を硝酸に溶かし冷却すると得られる(条件によっては6水和物が得られる)。無色ないし淡紫色の結晶。単斜晶系比重1.6835(21℃),融点47.2℃。潮解性が著しく,空気中で褐色液体となる。加熱すると50℃で硝酸を発生し,100℃で酸の半分を,赤熱で全部を失う。強熱すると酸化鉄(Ⅲ)になる。水,アルコールアセトンに易溶。水溶液は紫外線により分解し,硝酸鉄(Ⅱ)と酸素とになる。市販品の水和数は一定しないことが多い。媒染剤,絹の増量剤,なめし剤,分析試薬等に用いられる。有機物と接触させておくと発火するおそれがあるので保存に注意する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「硝酸鉄」の意味・わかりやすい解説

硝酸鉄
しょうさんてつ
iron nitrate

鉄の硝酸塩。2価および3価の次の2種がおもなものである。

(1)硝酸鉄(Ⅱ) 金属鉄または硫化鉄(Ⅱ)を冷希硝酸に溶かせば得られるが、合成法としては硫酸鉄(Ⅱ)と硝酸鉛(Ⅱ)または硝酸バリウムとの間の複分解を利用するほうがよい。

  FeSO4+Pb(NO3)2
   ―→Fe(NO3)2+PbSO4
 また、硝酸鉄(Ⅲ)溶液を銀で還元する方法もある。水溶液から析出させると、通常淡緑色の六水和物が得られる。斜方晶系の結晶で湿った状態では安定であるが、乾燥すると暗赤色の鉄(Ⅲ)水酸化物塩に変わる。ほかに九水和物も知られている。

(2)硝酸鉄(Ⅲ) 金属鉄を20~30%の硝酸に溶かせば得られるが、析出時の溶液や酸の濃度によって六水和物または九水和物が得られる。いずれも無色または淡紫色の結晶で、前者は斜方晶系、後者は単斜晶系に属する。潮解性が著しく、水に溶けると加水分解して褐色を呈する。エタノール(エチルアルコール)、アセトンにも溶ける。鉄顔料、媒染剤、なめし剤、分析試薬、医薬などに用いられる。

[鳥居泰男]


硝酸鉄(データノート2)
しょうさんてつでーたのーと

硝酸鉄(Ⅱ)六水和物
  Fe(NO3)2・6H2O
 式量  287.9
 融点  60.5℃
 沸点  ―
 比重  ―
 結晶系 斜方
 溶解度 200g/100g(水0℃)


硝酸鉄(データノート1)
しょうさんてつでーたのーと

硝酸鉄(Ⅲ)九水和物
  Fe(NO3)3・9H2O
 式量 404.0
 融点 47.2℃
 沸点 ―
 比重 1.6835(測定温度21℃)

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化学辞典 第2版 「硝酸鉄」の解説

硝酸鉄
ショウサンテツ
iron nitrate

】硝酸鉄(Ⅱ):Fe(NO3)2・6H2O(278.95).無水物は得られていない.硫化鉄(Ⅱ)または鉄を,冷希硝酸(密度1.034 g cm-3 以下)に溶かすと析出する.無~淡緑色の板状晶.融点60.5 ℃.水に易溶.水溶液は酸性を示す.[CAS 14013-86-6:Fe(NO3)2][CAS 13476-08-9:Fe(NO3)2・6H2O]【】硝酸鉄(Ⅲ):Fe(NO3)3・9H2O(404.00).無水物は得られていない.鉄粉を20~30% 硝酸に溶かして冷却すると析出する.無~淡紫色の結晶.密度1.68 g cm-3.融点47.2 ℃.溶融すると赤色の液体になり125 ℃ で分解する.融解した九水和物に無水硝酸を加えて冷却すると六水和物が得られる.Fe(NO3)3・6H2Oは無色の結晶で,融点35 ℃.いずれも潮解性が強い.水に易溶.水溶液は酸性を呈し,時間が経つと加水分解して褐色になる.水溶液は紫外線により硝酸鉄(Ⅱ)と酸素に分解する.エタノール,アセトンに可溶,硝酸に微溶.強酸化剤なので有機物に接触させておくと発火する危険がある.触媒,金属表面処理剤,媒染剤,皮なめし剤,医薬品,顔料製造などに用いられる.[CAS 7782-61-8]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硝酸鉄」の意味・わかりやすい解説

硝酸鉄
しょうさんてつ
iron nitrate

(1) 硝酸鉄 (II) ,硝酸第一鉄 化学式 Fe(NO3)2 。淡緑色の6水和物結晶。融点 60.5℃。水に易溶。 (2) 硝酸鉄 (III) ,硝酸第二鉄 化学式 Fe(NO3)3 。6水和物は淡紫色ないし無色の潮解性結晶。融点 35℃,100℃以下で分解。水,アルコール,アセトンに易溶。媒染剤,なめし剤,分析用試薬に用いられる。

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世界大百科事典(旧版)内の硝酸鉄の言及

【硝酸鉄】より

…酸化数IIおよびIIIの鉄の硝酸塩が知られている。
[硝酸鉄(II)]
 化学式Fe(NO3)2・6H2O。無水和物は得られていない。…

【硝酸鉄】より

…酸化数IIおよびIIIの鉄の硝酸塩が知られている。
[硝酸鉄(II)]
 化学式Fe(NO3)2・6H2O。無水和物は得られていない。…

※「硝酸鉄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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