示温塗料(読み)シオントリョウ(英語表記)heat sensitive paint

デジタル大辞泉 「示温塗料」の意味・読み・例文・類語

しおん‐とりょう〔シヲントレウ〕【示温塗料】

示温材

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「示温塗料」の意味・わかりやすい解説

示温塗料 (しおんとりょう)
heat sensitive paint

一定の温度で色が変わる化合物顔料とした塗料で,温度を測定するのに用いられる。カメレオン塗料,サーモカラーthermocolorともいう。可逆性示温塗料と不可逆性示温塗料に大別される。前者に使用される顔料は,着色機構が可逆的で,冷却すれば復色するものであり,結晶転移による変色を利用している。たとえば,水銀およびそのハロゲン化物,そのほか錯塩複塩および液晶が使用される。展色剤は,使用温度により,耐熱性の点から分類され,ラッカー類は50~100℃,ビニル系ワニスは50~150℃,ケイ素樹脂ワニスは150~300℃に使用される。後者に使用される顔料には,脱水反応による変色を利用するもの(たとえば,CoCl2・2(CH26N4・10H2O,NiBr・2(CH26N4・10H2O等コバルトニッケルの錯塩,複塩),および分解反応による変色を利用するもの(たとえば,コバルト,アルミニウム等の炭酸塩,硫化物,アンモニウム塩。使用温度300~600℃)がある。用途としては,(1)電気機械器具モーター変圧器電熱器)の過熱防止と温度指示,(2)危険物容器または貯蔵庫の温度指示による災害防止,(3)炉内部等外部に出ていない部分の温度測定,(4)航空機・自動車エンジンの回転軸,シリンダー等の運転時における温度測定,(5)種々の物体の表面温度の変化および分布状態の測定,などがあるが,センサーその他温度を測定・記録する技術が豊富に開発されたため,1965年以降その使用は激減している。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「示温塗料」の意味・わかりやすい解説

示温塗料【しおんとりょう】

サーモカラー,カメレオン塗料とも。特定の温度で明瞭な変色をする特殊な塗料で,物体の表面温度測定を目的とする測温材料の一つ。顔料の特性により,冷却しても元の色に戻らない不可逆性のものと,冷却すると元の色に戻る可逆性のものとがある。不可逆性顔料としてはコバルト,ニッケル,鉄,銅,クロム,マンガンなどの化合物で,組成中にアンミンまたはアンモニウム基,炭酸基,結晶水などを含み,熱分解などの化学的変化により組成が変わるものが用いられ,可逆性顔料としてはAg2HgI4,Cu2HgI4,Ag2HgI4・Cu2HgI4固溶体などが用いられる。変色温度は50℃以下のものから800℃くらいのものまである。電動機,軸受などの過熱防止信号,加熱物の表面温度測定などに広く利用されたが,温度センサー技術の開発により使用は減少した。
→関連項目塗料

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「示温塗料」の意味・わかりやすい解説

示温塗料
しおんとりょう
temperature indicating paint

測温塗料ともいう。ある特定の温度になるとはっきり変色する特殊な塗料で,物体の表面温度の測定や監視に用いられる。次の2種がある。 (1) 不可逆性示温塗料 特定の温度以上になると変色し,冷却後もその色を保つもの。顔料として用いられるコバルト,ニッケル,銅,その他の化合物が熱分解その他によって組成が変ることを利用している。通常 450℃程度まで使用できる。 (2) 可逆性示温塗料 いったん変色しても特定の温度以下になると再びもとの色に戻るもの。化合物の結晶系の転移やその他の物理的変化を利用するもので,組成変化はない。ヨウ化水銀 (II) 酸塩その他が用いられ,200℃近くまで適用される。サーモカラー,テンプアラーム,サーモペイントなどの商品名で市販されている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「示温塗料」の意味・わかりやすい解説

示温塗料
しおんとりょう
heat sensitive paint

サーモペイントthermo-paint、カメレオン塗料ともいわれ、一定の温度で変色する化合物を顔料として含む塗料。これには可逆型と不可逆型とがある。前者は、熱によりペイントに使用されている顔料化合物の結晶型の転移に伴い変色するもので、顔料としてヨウ化水銀錯塩などが用いられている。後者は、主として含有している顔料の加熱により脱ガス等を伴う熱分解反応などの化学変化によるもので、加熱によって一度変色すると、温度が下がり冷却されても、もう元の色に戻らない不可逆性のものである。用途は、電力設備の主回路、接続箇所の発熱の点検による事故の未然防止、そのほか発熱部位の温度チェックなどに離型紙をはがすタイプで使用されている。

[垣内 弘]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android