社会不安(読み)しゃかいふあん(その他表記)social unrest

翻訳|social unrest

改訂新版 世界大百科事典 「社会不安」の意味・わかりやすい解説

社会不安 (しゃかいふあん)
social unrest

人々の既存の〈意味世界〉が目下生起している現象に対して,適切な意味づけや対処の指針を人々に与えられない不確定な状況で生じやすい危機感情。それは,(1)現象についての十分な情報や知識を得られず,(2)現象の表出の原因や経緯についての的確な知識がなく,(3)今後の事態推移仕方についての予想もつかず,(4)そのために具体的な対処の仕方もわからない状況にあって顕在化する。したがって社会不安は国際関係,階級関係,集団相互の関係,集団内部の関係,あるいは自然災害などさまざまな場においてあらわれ,その質や広がりは一律でない。いずれにしても社会不安が増大してくると,人々はその不安を解消すべくなんらかの行動を起こしやすくなる。このような状況下では,宗教に安心感を求めたり,強い政治的リーダーを希求したり,スケープゴートを求めたり,あるいはパニック状態に陥って群集行動を示したり,流言に踊らされたりするものが増える。

 現在,社会不安はより深刻な問題としてとらえられている。それは社会不安が一時的なものとしてでなく,恒常的なものとして構造化しているからである。すなわち,(1)社会全体が無限に巨大化,機械化されていく傾向にあって,生活単位とする小集団との間にますます格差が生じてきていること,(2)小集団相互間に分裂葛藤が生じてきていることから,自己を同一化する場を求めることができずに無力感に落とし入れられているからである。それはまた,合理性を強いられる近代社会にあって,非合理的な小集団に生活しているということにも起因しているともいえよう。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の社会不安の言及

【集合行動】より

…集合行動への関心は19世紀末フランスのル・ボンの群集心理の研究にみられるように,はじめは集合行動の非合理的性格に注目するものであったが,やがて集合行動が新しい秩序を形成してゆくものとして積極的に評価するようになった。それによると,社会不安と呼ばれる不安定状態が生ずると,既成の制度が有効ではなくなり人々の生活が危機におちいるので,その解決を求めて人々は探索行動を始め,そこに未組織の集合行動が発生してくる。やがて,それが定形化し組織化されるようになる。…

※「社会不安」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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