社会学的法学(読み)しゃかいがくてきほうがく(英語表記)sociological jurisprudence
soziologische Rechtswissenschaft[ドイツ]

改訂新版 世界大百科事典 「社会学的法学」の意味・わかりやすい解説

社会学的法学 (しゃかいがくてきほうがく)
sociological jurisprudence
soziologische Rechtswissenschaft[ドイツ]

広義には,法の形式や内容よりも法が実際社会においてどのように機能しているかに重点を置く法学上の立場一般を指す。この意味では,20世紀初頭のドイツにおいてE.エールリヒやH.カントロビチに代表される自由法論やさらにP.ヘックを主唱者とする利益法学なども〈社会学的法学〉に含まれる。これに対して,狭義の社会学的法学は19世紀末のアメリカにおけるプラグマティズムの哲学運動を背景とし,O.W.ホームズ,B.N.カードーゾーを先駆者としてR.パウンドによって理論的表現を与えられた法学的立場を指す。パウンドは法学の中心的概念として社会的必要・社会的利益を主張し,法学はこうした社会的必要と諸利益の調整のための技術であるとした。彼はこの主張を社会工学social engineeringとしての法学と表現しているが,この社会工学ないし実用科学としての法学の思想は広義の社会学的法学に共通の考え方である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「社会学的法学」の意味・わかりやすい解説

社会学的法学
しゃかいがくてきほうがく

sociological jurisprudenceの訳語。一般には法社会学sociology of lawと同義で、法現象を社会学的に分析研究する法学部門をさす。広い意味では、伝統的な解釈法学実定法のドグマティックな解釈に専念したのに対し、法をそれの社会的生活諸関係との連関において研究しようとするいわゆる社会学派sociological schoolの理論を含むものとみられるが、それとの区別はかならずしも明確でない。狭い意味では、ヨーロッパにおける社会学の一部門としての法社会学と異なり、アメリカでロスコー・パウンドらによって展開された、法秩序の実際的諸問題を直接に研究する実用法学をさしている。

[大江泰一郎]

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世界大百科事典(旧版)内の社会学的法学の言及

【法社会学】より

…法社会学は,実用法学の長い伝統の中から,それを批判するものとして生まれた比較的新しい学問である。実用法学は,国家権力の執行,すなわち立法,司法,行政という実用目的のために,実定法(制定法,判例法,慣習法)を構成する法規の定立に関する立法学と,法規の内容の確定とそれらの相互関係の調整に関する法解釈学とからなる応用的学問である。したがって実用法学は,法という社会現象すなわち法現象を,その実用目的の範囲内で,限られた側面においてのみ研究するものである。…

※「社会学的法学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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