法社会学(読み)ほうしゃかいがく(英語表記)sociology of law

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

法社会学
ほうしゃかいがく
sociology of law

法に関する社会的諸事象を他の社会的諸因子と関連づけ経験科学的に研究する学問分野。「生ける法」の探求を強調した E.エールリヒによって確立され,法学の一分野となったが,学が経験科学,応用科学としての性格を強めるにつれて,法社会学の研究対象も拡大され,裁判過程や法意識の研究も進められている。

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デジタル大辞泉の解説

ほう‐しゃかいがく〔ハフシヤクワイガク〕【法社会学】

法を他の社会現象との関連において考察し、法の機能・構造などを社会学的な方法・理論により経験科学的に研究しようとする学問。

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百科事典マイペディアの解説

法社会学【ほうしゃかいがく】

法現象の社会学的研究を目的とする学問。概念法学に対する自由法論による批判から19世紀後半以降発展し,現実の社会の中で生きている法の動態を経験科学的に捕らえようとする。E.エールリヒ,M.ウェーバーらによって創始され,法や社会的規範・慣習に関する実態調査,紛争解決過程,立法・司法の生成プロセスやその社会的機能,さらに法意識や法文化の研究などに展開。日本においては末弘厳太郎などによって法社会学的な方法が本格的に法律学に導入された。→川島武宜
→関連項目カントロビチシュタイン

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世界大百科事典 第2版の解説

ほうしゃかいがく【法社会学 sociology of law】

法社会学は,実用法学の長い伝統の中から,それを批判するものとして生まれた比較的新しい学問である。実用法学は,国家権力の執行,すなわち立法,司法,行政という実用目的のために,実定法(制定法判例法慣習法)を構成する法規の定立に関する立法学と,法規の内容の確定とそれらの相互関係の調整に関する法解釈学とからなる応用的学問である。したがって実用法学は,法という社会現象すなわち法現象を,その実用目的の範囲内で,限られた側面においてのみ研究するものである。

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大辞林 第三版の解説

ほうしゃかいがく【法社会学】

法を社会学的な見地・方法により実証的に研究する学問。法を社会現象としてとらえ、その成立・変化・機能・構造などを社会との関連の中で明らかにし、またそれらが社会に及ぼす作用について考察する。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

法社会学
ほうしゃかいがく
sociology of law

法哲学、法史学などとともに、いわゆる基礎法学の一部門をなし、法をそれ自体としてではなく、社会現象、社会構造との関連において考察し、法の機能や実態を客観的に明らかにしようとする法学分野である。
 法律学は、伝統的には法解釈学として、現行の法(実定法)をいかに解釈し運用すべきかを研究する実践的、実用的な学問として営まれてきたが、その教義学的性格に飽き足らず、法を社会現象の一部として客観的に認識しようとする人々によって、法社会学が提唱された。モンテスキューやイェーリングらを先駆者に数えあげることもできるが、本格的には20世紀初頭の自由法運動を担ったエールリヒやカントロウィッツらによって創始された。エールリヒは、裁判規範にすぎない国家制定法に対して、現実に社会を規律している行為規範としての「生ける法」に注目すべきことを説き、法社会学の理論的基礎を置いた。アメリカでもほぼ同時期に、法規範の単なる解釈的操作に不満ないし不信をもつ人々によって法社会学の基礎が築かれた。最高裁判所判事のホームズ、カードーゾ、リアリズム法学のフランク、ルーウェリン、プラグマティズムを導入して社会学的法学を提唱したパウンドなどをあげることができる。
 その後、法社会学は、具体的な法現象の社会学的調査研究と、その方法的基礎をなす理論枠組みとの双方にわたって豊富な成果を生み出してきた。その過程で、マリノフスキーらによって人類学的分野が導入されたことはとくに注目される。理論枠組みの構成のうえで重要な学説としては、マックス・ウェーバーの法理論とマルクス主義法学がある。ウェーバーは、(1)法解釈学が法文の規範的に正しい意味を探究する実践的価値判断的学問であるのに対し、法社会学は法規範の存在によって人々の行動が事実のうえでどのように方向づけられるかを探究する経験科学であるとして、両者の学問的性格の相違を明瞭(めいりょう)にした点、(2)法を強制機構によって保障される秩序として、習俗や慣習から法を分かつ概念的基準を明確に提起した点、(3)近代法の特殊に合理的な性格を比較史的な広い視野にたって分析した点、などに巨大な功績が認められる。マルクス主義法学は、法を経済的土台によって客観的に制約されるイデオロギー的上部構造の一部として位置づけることによって、数々の分析視角を提示している。さらに近年に至っても、いわゆる現代法現象に直面して、それを解明するための理論枠組みの提示がさまざまな立場から試みられている。たとえば、ドイツのルーマン、アメリカのセルズニック、フランスのカルボニエらをあげることができる。
 日本の法社会学は、末弘厳太郎(すえひろいずたろう)を先駆者とし、戒能通孝(かいのうみちたか)、川島武宜(たけよし)、渡辺洋三らによって、継受された「近代的」法典と現実に存在する「前近代的」な法慣行・法意識とのずれの究明が、大きなテーマとされてきた。理論的には、エールリヒ、ウェーバーおよびマルクス主義の影響を強く受けてきたが、川島武宜によってアメリカの行動科学的アプローチが導入されて以来、多様化している。[名和田是彦]
『川島武宜著『日本人の法意識』(岩波新書) ▽渡辺洋三著『法とは何か』(岩波新書) ▽碧海純一著『法と社会』(中公新書) ▽エールリッヒ著、河上倫逸、M・フーブリヒト訳『法社会学の基礎理論』(1984・みすず書房) ▽M・ウェーバー著、世良晃志郎訳『法社会学』(1974・創文社) ▽渡辺洋三著『法社会学と法解釈学』(1959・岩波書店)』

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