改訂新版 世界大百科事典 「神宮雑例集」の意味・わかりやすい解説
神宮雑例集 (じんぐうぞうれいしゅう)
伊勢の神宮の上代より鎌倉初期までの由緒,神領,行事などについて記した史書。2巻。巻一に御鎮座事,付として宮地を改むる事,二社太神宮朝夕御饌事,御井社事,神封事,巻二に神宮四至事,内侍所事,心御柱事,天平賀(あめのひらか)事,政印事,年中行事事と10項目にわたって記す。神宮の古伝,また当時京都方面に存し,現在に伝えられていない史料などを基礎として編述されたものとみられ,神宮史,神道史のみならず,古代史研究上も重要な一書。編者,成立年代ともに不詳であるが,その広範な内容の叙述態度より大神宮司庁のだれかの手になるものとみられ,政印事のなかに〈建仁二年〉とあり,また年中行事事の六月月次(つきなみ)祭の条に,1210年(承元4)5月に宮号宣下のあった外宮月夜見(つきよみ)宮を〈月読社〉としていることから,1202年(建仁2)より1210年以前に記された鎌倉初期の書とみられている。すなわち,源頼朝の崇敬,神領寄進安堵のことなどもあり,経済的にも安定した神宮内部で編纂されたとみられる。《群書類従》神祇部,《神道大系》神宮篇所収。
執筆者:鎌田 純一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報