神経難病(読み)しんけいなんびょう(その他表記)neurological intractable disease

最新 心理学事典 「神経難病」の解説

しんけいなんびょう
神経難病
neurological intractable disease

難病intractable disease」とは医学的に明確に定義されているわけではないが,1972年の厚生省(現,厚生労働省)による難病対策要綱では,「⑴原因不明,治療方法未確立であり,かつ,後遺症を残すおそれが少なくない疾病,⑵経過慢性にわたり,単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く,また精神的にも負担の大きい疾病」と規定されている。難病はいわゆる「不治の病」に対して社会通念として用いられてきたことばであり,その時代の医療水準や社会事情によって変化する。かつての日本では「不治の病」であった結核は,今日では難病とはいえなくなっている。2012年現在,厚生労働省は130疾患を難病として指定している。

 難病の中で,とくに神経系を侵す疾患を神経難病とよぶ。神経難病はまれな疾患であるため,患者数が非常に少なく,社会的に理解されにくく,患者や家族の苦痛も大きい。難病指定の130疾患のうち,神経・筋疾患として指定されているものは,プリオン病(クロイツフェルト-ヤコブ病,ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカー病,致死性家族性不眠症),亜急性硬化性全脳炎,進行性多巣性白質脳症,脊髄小脳変性症パーキンソン病関連疾患(パーキンソン病,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症),ハンチントン病有棘赤血球を伴う舞踏病,運動ニューロン病(筋萎縮性側索硬化症,脊髄性筋萎縮症,球脊髄性筋萎縮症,原発性側索硬化症),多系統萎縮症(シャイ-ドレーガー症候群,線条体黒質変性症,オリーブ橋小脳萎縮症),副腎白質ジストロフィー,多発性硬化症,フィッシャー症候群,ギラン-バレー症候群,重症筋無力症,慢性炎症性脱髄性多発神経炎,多巣性運動ニューロパチー(ルイス-サムナー症候群),単クローン抗体を伴う末梢神経炎(クロウ-フカセ症候群),正常圧水頭症,モヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症),ペルオキシソーム病,ライソゾーム病,脊髄空洞症,HTLV-1関連脊髄症(HAM),ミトコンドリア病である。

 神経難病の多くはいまだに原因不明であるが,遺伝子変異gene mutationが発症の直接的な要因となる神経変性疾患と,他の環境要因との相互作用が発症に関与して体質や素因形成に働く免疫性神経疾患とに大きく区分できる。前者には運動ニューロン病,脊髄小脳変性症,パーキンソン病,進行性核上性麻痺などが含まれる。後者としては,重症筋無力症,多発性硬化症などが挙げられる。明らかに遺伝する疾病はごく一部であり,多くは孤発例である。これらの神経難病は,それぞれの神経難病について1万~3万人に1人程度の確率で発症するが,とくに多いパーキンソン病の発症率は,60歳以上では500人に1人程度である。

 難病のうち,診断基準が一応確立し,かつ難治度・重症度が高く患者数が比較的少ないため,公費負担の方法を取らないと原因の究明,治療方法の開発などに困難を来す恐れのある56疾患は,特定疾患に指定されている。これらの疾患については,医療費の公費負担を受けることができる。一部の神経難病は新しい治療薬や治療技法が開発され,予後が改善してきているが,とくに神経変性疾患には効果的な根治療法はまだ見いだされていない。多くは徐々に進行していく慢性疾患であり,状態像に応じた適切な身体的・精神的サポートが対応の中心となる。進行すれば介護やリハビリテーションに重点がおかれる。近年,神経難病の遺伝子変異が次々と明らかとなり,いくつかの神経難病では遺伝子の位置・構造が判明した。遺伝子変異と発症との関係が今後の研究の中心課題となりつつあり,遺伝子治療の可能性も現実的となってきている。 →神経系
〔三村 將〕

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