マンガン乾電池の直列接続により4.5~67.5ボルトの公称電圧を得るようにした電池。マンガン乾電池は二酸化マンガンと炭素粉末、電解液を混練した正極合剤と亜鉛負極板およびセパレーターなどから構成されている。この亜鉛負極板の裏面に、導電性炭素膜を塗付してつぎのマンガン乾電池を重ねたとき、その正極合剤の集電板となるようにすることにより、複数個を積層させた構造のものである。また、導電性黒鉛膜の表面に正極合剤を、裏面に負極用の亜鉛粉を印刷法で塗付したものに、バイポーラ(双極性)電極を積層していく方式のものもある。
1941年にアメリカで開発され、主として電子管の陽極と陰極へ直流電圧を印加(加えること)するため、積層数の多い高電圧のものが使用された。その後ポータブルラジオがトランジスタ式になるとともに公称電圧6.0~9.0ボルトのものが大量に生産されるようになった。しかし現在では、ポータブルラジオや携帯音響機器などの電源は、丸形のマンガン乾電池やアルカリ乾電池、ニッケルカドミウム蓄電池、ニッケル水素蓄電池、リチウムイオン二次電池などを複数個使用する方式となったため、積層乾電池の用途は小形で高電圧が必要な電子機器に限られている。
JIS規格には、丸形マンガン乾電池(形状記号R)を3個および4個積層した公称電圧が4.5ボルトのもの(3R12など)と6.0ボルトのもの(4R25Xなど)があり、また平形マンガン乾電池(形状記号F)を6、10、15、20および45個積層した9.0ボルトのもの(6F22など)、15.0ボルトのもの(10F15など)、22.5ボルトのもの(15F15など)、30.0ボルトのもの(20F20)および67.5ボルトのもの(45F40)が規定されている。しかし乾電池の標準化が世界的に進み、積層乾電池としては国内、海外ともに6F22の形式のものに集約されてきている。
なお、アルカリマンガン電池であるアルカリ乾電池を用いた積層乾電池として、6F22と互換性のある9.0ボルトの6LR61があり、またアルカリボタン電池を用いた6.0ボルトの4LR44が生産されている。
[浅野 満]
『電気化学会編『電気化学便覧』(2000・丸善)』▽『電池便覧編集委員会編『電池便覧』(2001・丸善)』
マンガン乾電池の素電池は公称電圧1.5Vであるが,素電池を図のように扁平角型につくり,これを直列に積み重ねて高電圧を得るようにしたものを積層乾電池という。
執筆者:笛木 和雄
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