端歌(読み)はうた

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「端歌」の意味・わかりやすい解説

端歌
はうた

日本音楽の種目名。狭義には地歌の分類名称。当初は本手,長歌など伝承上の古典に対して,自由な創作曲をいったが,やがて浄瑠璃物作物 (さくもの) ,手事物といった分類が行われるとともにそれらを除外した歌物をいうようになった。ただし,このうちでも謡曲の歌詞を典拠とする「謡物」は除くこともある。上方舞の舞地 (伴奏) の中心曲でもある。享保 (1716~36) 頃以降,継橋検校らが積極的に作曲を行い,宝暦年間 (51~64) には鶴山勾当,吉村検校,歌木検校らが活躍し,なかでも歌木の『かくれんぼ』は端歌改革の動機的な曲として知られる。天明年間 (81~89) からは,大坂での文人の作詞活動とともに峰崎勾当らの名作曲家が出て,名作『雪』をはじめ今日でも地歌端歌の代表曲として演奏されるものが多数作られた。京都でも声楽本位の歌物が多く作られたが,これらは京端歌あるいは京歌物といって区別する。広義には江戸時代の小編歌謡を総称するが,「端唄」と記される江戸時代末期以降江戸で流行したはやり歌とその分流は除外する。文献上の初見は万治年間 (1658~61) の『吉原はやり小歌総まくり』で,少しあとの元禄 16 (1703) 年刊『松の葉』では,地歌の本手,長歌など伝承上の規範曲に入らない破格のものを端歌として収録している。当初は,京坂の芝居で用いられた芝居歌や,遊里などでのはやり歌などを取入れた曲も含まれ,また「端歌」を特に芝居の「出端 (では) 」の歌に限定して用いた例もある。また上方で行われた流行小編歌謡で,かつては「江戸歌」のなかに含まれていたものも端歌と呼ばれるが,現在ではこれを「上方のはやり端歌」と定義し,地歌の端歌と総合して「上方の端歌」と呼ぶことが主張されている。

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