(読み)シトギ

デジタル大辞泉 「粢」の意味・読み・例文・類語

しとぎ【×粢/×糈】

水に浸した生米をつき砕いて、種々の形に固めた食物。神饌しんせんに用いるが、古代の米食法の一種といわれ、後世は、もち米を蒸して少しつき、卵形に丸めたものもいう。しとぎもち。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「粢」の意味・読み・例文・類語

しとぎ【粢】

  1. 〘 名詞 〙 神に供える餠。もちごめを蒸し、少しついて卵形にしたもの。その形状から鳥の子ともいう。一説に、うるちの粉でつくったものという。しとぎもち。粢餠(しへい)。し。〔享和本新撰字鏡(898‐901頃)〕
    1. [初出の実例]「しとぎをせさせて、一折敷とらせたれば、すこし食ひて、あなうまや、うまやといふ」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)四)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「粢」の読み・字形・画数・意味


12画

(異体字)
15画

[字音] シ・セイ
[字訓] きび・しとぎ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(次)(じ)。〔説文〕五下に正字をに作り、「稻餠(たうべい)なり」とし、別体として・粢の二文を録する。粢の字を用いることが多く、〔国語、周語上〕「上の粢」のように、神饌のものをいう。国語の「しとぎ」にあたる。〔周礼、春官、肆師〕に字を、「」に作り、が神饌をいう字であろう。粢はいねもちの類をいい、粢糠・粢は粗末な食事の意である。

[訓義]
1. きび、また六穀の総称
2. しとぎ、神饌に供する穀物、もちにしたもの。
3. 斉(齊)と通じ、さけ、みき

[古辞書の訓]
名義抄〕粢 シトキ/粢餠 シトキ 〔立〕粢 モチキビ・シトキ・アワ

[熟語]
・粢糠粢食粢酌・粢粢盛・粢餠粢粱・粢・粢
[下接語]
馨粢・潔粢・粢・祭粢・黍粢・粢・倉粢・陳粢・稲粢・明粢・六粢・

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「粢」の意味・わかりやすい解説

粢 (しとぎ)

生米を水にひたしてやわらかくし搗(つ)き砕いて作った食べ物。〈しろもち〉〈からこ〉〈おはたき〉〈なまこ〉などと地方によって呼称は違うが,粢は《和名抄》や《新撰字鏡》にも見えている古語である。《和名抄》に〈祭餅也〉とあるように,一般には神祭の供え物(神饌)の一種に用いられているが,東北地方では米粢のほかに粟粢,稗粢があり,日常の食べ物になっていた。粢は火を用いないで調理する点で古い食べ物と考えられ,現在の餅に先行するものではないかと推定されている。神への供え物に用いられることが多いのは,人間の食べ物は煮たり焼いたりするようになっても,供え物だけは古い形の調理方法を守ってきたからだと考えられる。また,粢は望む形に作ることができ,長野県などでは野菜や果物,動物の形にしたものもあり,三月節句の菱餅や五月節句の巻餅(ちまき)のように,祭りや行事によって形を変えることもできた。米粉をどろどろにといた液体状の粢もあり,〈おのり〉とよばれる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「粢」の意味・わかりやすい解説

粢【しとぎ】

神前に供える(もち)の一種。《和名類聚抄》にみえる。生米を水に浸し柔らかくし,つきつぶして作る。各種の形に固めるが多くは楕円形にする。地方により日常食ともされ,豆を入れた豆粢,ヒエで作ったヒエ粢などもある。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android