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生米を水にひたしてやわらかくし搗(つ)き砕いて作った食べ物。〈しろもち〉〈からこ〉〈おはたき〉〈なまこ〉などと地方によって呼称は違うが,粢は《和名抄》や《新撰字鏡》にも見えている古語である。《和名抄》に〈祭餅也〉とあるように,一般には神祭の供え物(神饌)の一種に用いられているが,東北地方では米粢のほかに粟粢,稗粢があり,日常の食べ物になっていた。粢は火を用いないで調理する点で古い食べ物と考えられ,現在の餅に先行するものではないかと推定されている。神への供え物に用いられることが多いのは,人間の食べ物は煮たり焼いたりするようになっても,供え物だけは古い形の調理方法を守ってきたからだと考えられる。また,粢は望む形に作ることができ,長野県などでは野菜や果物,動物の形にしたものもあり,三月節句の菱餅や五月節句の巻餅(ちまき)のように,祭りや行事によって形を変えることもできた。米粉をどろどろにといた液体状の粢もあり,〈おのり〉とよばれる。
執筆者:坪井 洋文
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