(読み)アシギヌ

デジタル大辞泉 「絁」の意味・読み・例文・類語

あし‐ぎぬ【×絁】

し絹の意》太い糸で織った粗末な絹布太絹ふとぎぬ。→かとり
五色いついろの―一連ひとつらなりき」〈常陸風土記

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精選版 日本国語大辞典 「絁」の意味・読み・例文・類語

あし‐ぎぬ【&JISED9F;】

  1. 〘 名詞 〙 あらい絹糸平織りにした絹織物太絹(ふとぎぬ)。⇔縑(かとり)。〔十巻本和名抄(934頃)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「絁」の意味・わかりやすい解説


あしぎぬ

「悪(あし)き絹(きぬ)」の詰まったことばで、粗悪な絹のことをいい、太絹(ふとぎぬ)ともよんだ。また絹と併称され、絹に比べて粗悪な品質の蚕糸製品をさす。織物組織は平織で、現在の平絹(へいけん)にあたる。律令(りつりょう)時代には各地より調絁(ちょうあしぎぬ)として貢納され、その遺品正倉院に残っているが、あまり粗悪な絹とはいえない。これを紬(つむぎ)の前身とみて、絁は真綿から紡出したとする説があるが、遺品の絁は家蚕繭から引いた絹糸からなり、この説を裏づけできない。

[角山幸洋]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「絁」の解説


あしぎぬ

太い絹糸で平織にした粗製織物。「令義解(りょうのぎげ)」に「細きを絹と為し,麁(あら)きを絁と為す」とあり,「日本書紀」では「フトギヌ」と読む。中国渡来の上質の絹織物に対する悪し絹の意といわれ,出殻繭(でがらまゆ)や野蚕(やさん)をすいて紡いだ,節が多く光沢の少ない織物と思われる。

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旺文社日本史事典 三訂版 「絁」の解説


あしぎぬ

古代の絹織物
細糸で織った上質の絹に対し,太く粗なもので「あし」と呼んだ。令の規定により調・庸として貢納。奈良時代以後諸国で生産された。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【正倉院】より

…なかには二彩,単彩のものも多く,磁鉢,磁皿などの遺品が多い。(4)染織工 布,絁(あしぎぬ),織成(しよくせい),紗(しや),羅(ら),綾,錦がある。平織の織物のうち麻製を布,絹製を絁と呼ぶ。…

【平織】より

…綜絖(そうこう)2枚の最も単純な織機でも織製が可能なため,織物中最も広く応用されており,いざり機(地機)のような原始織機にたよった地方の織物や,未開地の織物には,これによるものが多い。絹による平織物を一般に〈平絹(ひらぎぬ)〉と称しており,古名にある〈縑(かとり)〉〈絁(あしぎぬ)〉などは絹糸の太い細い,組織の粗密によって区別された名称である。そのほか縞,絣,銘仙,縮緬(ちりめん),羽二重,甲斐絹(かいき),富士絹,紬(つむぎ)などは,経緯の絹糸の種類,太さ,密度,撚りの強弱および色糸の用法などにより外見は異なるが,いずれもその組織は平織を基本としている。…

【平絹】より

…無撚で織るので風合いが柔らかく,糸使いによって生地の重さの種類は多い。平安時代の貢献布の絹,白絹,縑(かとり),絁(あしぎぬ)はこの類である。また,玉糸を緯に使った玉緯絹,玉糸を経緯に用いた玉絹,緯糸に絓糸(しけいと),熨斗糸(のしいと)を織った絓絹,太織などは平絹に属する。…

【有職織物】より

…経糸と緯糸によって作られる織物の四原組織のうち繻子(しゆす)組織を除くすべて,平組織(平織),斜文組織(),綟り(もじり)組織(綟り織)を網羅し,それぞれの組織の中にもさまざまな風合いのものがみられる。 平織では絹,絁(あしぎぬ),縑(かとり),練緯(ねりぬき),精好(せいごう)などが挙げられ,絹は上質の生糸を用いて織ったもの,絁は絹よりやや質の落ちる太細のある糸で織ったもの,縑は上質の生糸を精密に固く織ったものとされている。以上は経緯とも生糸で織り,生絹(すずし)と呼ばれてそのまま使うか,それを練って練絹として用いる。…

※「絁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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