平絹(読み)へいけん

精選版 日本国語大辞典 「平絹」の意味・読み・例文・類語

へい‐けん【平絹】

〘名〙 平織りの絹織物。ひらぎぬ。
西宮記(969頃)一七「女蔵人、平絹唐衣、下濃裳」
※竹むきが記(1349)下「本院御方、御直衣、へいけん薄鈍(うすにび)を奉る」

ひら‐ぎぬ【平絹】

〘名〙 平織りの絹織物。へいけん。
※公忠集(986‐999)「五位蔵人(くらびと)なりけるを、位さらせ給ひにければ、ひらぎぬのさうぞくになりて参りたりけるを見て」

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デジタル大辞泉 「平絹」の意味・読み・例文・類語

へい‐けん【平絹】

ひらぎぬ

ひら‐ぎぬ【平絹】

平織りの絹織物。薄地で、和服裏地などに用いられる。へいけん。

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改訂新版 世界大百科事典 「平絹」の意味・わかりやすい解説

平絹 (ひらぎぬ)

後練絹織物。生糸を経緯に使って平織したものを生絹(きぎぬ)といい,これを精練したものを平絹,練平絹,地絹と呼ぶ。片羽二重よりも品質の落ちる生糸を密度をあらく織ったもの。無撚で織るので風合いが柔らかく,糸使いによって生地の重さの種類は多い。平安時代の貢献布の絹,白絹,縑(かとり),絁(あしぎぬ)はこの類である。また,玉糸を緯に使った玉緯絹,玉糸を経緯に用いた玉絹,緯糸に絓糸しけいと),熨斗糸(のしいと)を織った絓絹,太織などは平絹に属する。薄地ものは緋色に染めて紅絹(もみ)と呼ばれ,胴裏地や下着に使われ,厚地ものは更紗友禅など,捺染して着尺にも利用。玉糸や絓糸使いは広幅に織り,表装地,襖地等に使われる。埼玉県の糸好絹(いとよしぎぬ),秩父絹(玉絹),岐阜県の曾代絹(そだいぎぬ)などはすべて平絹である。生産地は群馬,埼玉,福島,長野,石川県など。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「平絹」の意味・わかりやすい解説

平絹
ひらぎぬ

絹織物の一種。ほぼ同じ太さの生糸を,経に1~2本,緯に2~3本を引きそろえて平織にしたもの。江戸時代に,上質で重目のものを羽二重 (はぶたえ) といい,軽目のもので,裏地に使用するものを平絹と呼ぶようになり,一般に和服の胴裏をさすようになった。これをウコンで下染めし,ベニバナで紅色に染めたものを特に紅絹 (もみ) という。最近は,化学繊維類が多量に使われているため,平絹の名はほとんど使われない。

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世界大百科事典(旧版)内の平絹の言及

【平織】より

…綜絖(そうこう)2枚の最も単純な織機でも織製が可能なため,織物中最も広く応用されており,いざり機(地機)のような原始織機にたよった地方の織物や,未開地の織物には,これによるものが多い。絹による平織物を一般に〈平絹(ひらぎぬ)〉と称しており,古名にある〈縑(かとり)〉〈絁(あしぎぬ)〉などは絹糸の太い細い,組織の粗密によって区別された名称である。そのほか縞,絣,銘仙,縮緬(ちりめん),羽二重,甲斐絹(かいき),富士絹,紬(つむぎ)などは,経緯の絹糸の種類,太さ,密度,撚りの強弱および色糸の用法などにより外見は異なるが,いずれもその組織は平織を基本としている。…

※「平絹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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