くず繭を平面状に引き伸ばして綿のようにしたもの。製糸の原料とならない出殻(でがら)繭や玉繭などを、灰汁(あく)またはソーダを加えて煮沸、精練し、よく水洗いしたのち水中で一顆(か)ずつ手で広げ、四角になるように四か所に釘(くぎ)を打った框(かまち)の上に広げ、釘に端をひっかけて方形にし、数枚重ねて乾燥する。これを角真綿という。近年は自家用としている傾向にあり、市場では見られなくなった。今日は袋真綿といい、袋状になっているものが市場に出ている。これは、繭の中に手を入れて広げ、袋状につくり、数枚重ねて乾燥したものである。江戸時代には帽子型のような型に、繭を袋状にしてかぶせ、何枚も重ねてつくった。当時の小袖(こそで)には真綿が用いられ、その需要は大であった。真綿は弾力性は小さいが、引っ張りに強く、切れにくく、保温性に優れている。産地は福島県、長野県、滋賀県などである。
真綿は木綿綿の進出によって、敷き真綿として木綿綿の綿入れの補強に用いられていたが、近年はふとん、丹前などには敷き真綿を用いなくなっている。真綿は充填(じゅうてん)材、補強用として用いられるだけではなく、織糸としても用いられる。すなわち、真綿を細く引き伸ばし、これに撚(よ)りをかけて経糸(たていと)、緯糸(よこいと)をつくり、染色し、織機にかけて織り、紬(つむぎ)織物をつくる。これの代表的なものは、伝統織物として重要無形文化財になっている結城(ゆうき)紬があげられる。近年、袋真綿の大きいものを背負い真綿とよび、防寒用として市販されている。これは背を十分に覆う大きさのものである。ガーゼをかぶせ、背に負うと暖かい。軽くて暖かいので老人に喜ばれる。
[藤本やす]
繭を煮て引き伸ばし綿状にしたもの。生糸の副蚕である汚繭,揚繭,出殻繭や玉繭等の製糸のしにくいもの,不能のものをセッケン,灰汁(あく),ソーダ等のアルカリ剤で精練してよく水洗,1粒ずつ水の中で広げて引き伸ばし,中のさなぎ(蛹)や不純物を除去し,ゲバと称する真綿掛枠に広げて掛け,乾燥させる。これを角真綿(かくまわた),袋真綿,ひじ掛け真綿と呼ぶ。白くて光沢があり,柔らかく保温性に富む。良質のものは手紬糸の原料とし紬織物になる。防寒衣や丹前,どてらの引綿や布団綿に利用される。江戸時代の綿帽子は真綿で作られた。精練したものを機械的に引き伸ばした機械真綿は,紡績原料にしたり,篠状(しのじよう)にしてキルティングを行い防寒衣に使用したりする。産地は長野,滋賀,福島県が多く,近年は中国,韓国からの輸入が増えている。
執筆者:宮坂 博文
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
玉まゆまたはくずまゆを弱アルカリ剤を用いて,セリシンを溶解し,これを広げた形にしたもので,軽くて,柔らかく,含気量が多く,保温性にすぐれているため,防寒用材料として用いるとともに,つむぎ糸の原料などにも用いる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
※「真綿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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