経済安全保障推進法(読み)けいざいあんぜんほしょうすいしんほう

共同通信ニュース用語解説 「経済安全保障推進法」の解説

経済安全保障推進法

政府が掲げる経済安全保障政策の中核として2022年5月に成立した法律米国覇権を争う中国への対抗念頭に①半導体のような重要物資のサプライチェーン(供給網)強化②重要技術の研究開発支援③基幹インフラの安全確保④軍事転用される恐れがある先端技術特許情報の非公開化―という4本柱で構成される。供給網強化と技術開発は取り組みが先行している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「経済安全保障推進法」の意味・わかりやすい解説

経済安全保障推進法
けいざいあんぜんほしょうすいしんほう

安全保障を確保するための経済政策を総合的・効果的に推進することを目的とした法律。正式名称は「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」(令和4年法律第43号)。2022年(令和4)5月に成立、2024年5月までに段階的に施行される。ハイテク分野での中国の台頭や世界的な半導体不足を踏まえた、岸田文雄政権の看板政策の一つである。(1)暮らしや経済活動に欠かせない特定重要物資の供給網(サプライチェーン)の構築・強化、(2)サイバー攻撃などに備えた基幹インフラの事前審査、(3)官民協力による先端的技術開発、(4)核や武器開発につながる特許情報の非公開、の4本柱からなる。経済安全保障推進法に対し、産業界には、新興国の台頭や紛争の増加に対処するため必要との意見がある一方、自由な経済活動を制約されかねないとの懸念もある。

 政府は内閣府に経済安全保障推進室を設置し、基本方針を策定。特定重要物資として、半導体、レア・アース(希土類元素)、電池、医薬品などを政令・省令で定め、関連事業者の調達計画を認定し、財政支援する。政府は原材料の調達先や在庫などを調査する権限をもち、供給の滞りを避ける。基幹インフラに電気、ガス、石油、電気通信、放送、金融など14業種を指定し、政府がサイバー攻撃時のシステム障害や情報流出のリスクなどについて事前審査する。アメリカ政府による中国の華為技術ファーウェイ)製品の使用禁止措置を念頭に、安全保障上の脅威となる外国製品が入り込むのを防ぐ。先端的技術では、人工知能(AI)、量子情報科学、バイオ技術、海洋関連、極超音速などのテーマごとに官民協議会を設けて先端的技術情報を共有する。政府の経済安全保障基金(5000億円規模)から企業、大学、研究機関などへ資金支援するほか、政府の機密情報を守秘義務つきで提供する。特許情報のうち、ウラン濃縮技術など軍事転用のおそれがある特許を防衛省などが審査し、必要な場合には保全対象発明に指定して非公開とする。虚偽の届け出や情報を漏洩(ろうえい)した企業、事業者などには、2年以下の懲役または100万円以下の罰金を科す。

[矢野 武 2022年9月21日]

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