刺しゅうをもって仏像や菩薩(ぼさつ)像、浄土図など仏教を主題に表したものの総称。刺しゅうの技術のもつ単調な仕事の内容と多数による共同作業が可能なため、絵画にはない特性を生かし、古い時代からインド、西域(せいいき)、中国、日本など、仏教の行われた地域で広くつくられた。中国、とくに西域地方にみられる繍仏の代表的遺品は、イギリスのオーレル・スタインが敦煌莫高窟(とんこうばっこうくつ)より将来した『刺繍霊鷲山(りょうじゅせん)説法図』(ロンドン・大英博物館)で、縦241センチメートル、横160センチメートルの大作で、唐代8世紀の作といわれる。なお、この刺しゅうの主題および図様が莫高窟382窟のそれときわめて似ており、繍仏の製作が当時は絵画に劣らず盛んであったことを物語っている。
日本には飛鳥(あすか)時代すでに大陸から高度な刺しゅうの技術が伝えられ、奈良・中宮寺の『天寿国繍帳(てんじゅこくしゅうちょう)』は聖徳太子没後、その冥福(めいふく)を祈ってつくられたもので、銘文も他書に記録され、貴重な遺品である。またもと京都・勧修寺(かじゅうじ)に伝来した『刺繍釈迦如来(しゃかにょらい)説法図』(奈良国立博物館)は8世紀代の作である。飛鳥・奈良時代の大和(やまと)の諸大寺の堂内の壁面にはこのような大画面の繍仏が掛けられていたことが記録のうえでも確かめられるが、平安時代になるとつくられなくなり、鎌倉・室町時代には庶民信仰を基盤とした個人的な小画面の阿弥陀(あみだ)像などを表したものがつくられ、図様も画一化された。
[永井信一]
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