(読み)くり

精選版 日本国語大辞典 「繰」の意味・読み・例文・類語

くり【繰】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「くる(繰)」の連用形の名詞化 )
  2. 糸などを巻きながらたぐること。
  3. かんぐること。察し。
    1. [初出の実例]「女と云ものは、くりのふかいもので」(出典:虎明本狂言・花子(室町末‐近世初))
  4. ( クリ ) 謡曲の節の一つ。通常の上音より弱吟(よわぎん)では二音階、強吟(つよぎん)では一音階くり上げて、最高調でうたうもの。上掛(かみがかり)では「クリ」、下掛(しもがかり)では「シヲリ」という。繰節(くりぶし・くるふし)
  5. ( クリ ) 謡曲の特定の一節(いっせつ)の名。上掛(かみがかり)でクリ、下掛(しもがかり)では序という。拍子に合わない謡で、上音を基調として下音のユリ節で終わり、その間に必ずくり節を含むのが特徴。多くは四、五句からなり、通常クリ、サシ、クセと連続する。また、内容はクセの序章にあたり、漢詩文仏典(また、それにならった文)の一節をとることが多く、「そもそも」「それ」「しかるに」などの語で始まる。本クリと半クリの二種があり、前者は同吟で、後者は一人(ツレまたはシテ)でうたう。
    1. [初出の実例]「ばんりのはたうにおもむくも〈下クリ〉ただ一はんの道とかや」(出典:金島書(1436)海路)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「繰」の読み・字形・画数・意味


17画

(異体字)繰
19画

[字音] ソウ(サウ)
[字訓] くる

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(巣)(そう)。〔説文十三上に「(まゆ)を繹(いとく)りて絲と爲すなり」とあり、繭から糸を繰りとることをいい、繰も同じ字。異文に、・參(参)・蚤に従う字があるが、からんだ糸を繰りとるのはが本字。また飾りひも、組みひもなどの意に用いる。

[訓義]
1. いとくる。
2. 冠のたれひも、ひもかざり。
3. 玉を敷くしきもの。

[古辞書の訓]
名義抄〕繰・ クル 〔字鏡集・繰 アソブ・ヲスヂ・クル・マユヒク・イトスヂ

[熟語]

[下接語]
・蚕・糸・抽


常用漢字 19画

(異体字)
17画

[字音] ソウ(サウ)
[字訓] くる・あやつる

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(そう)。〔説文〕十三上に「帛(きれ)の紺の色の如きものなり。或いは曰く、深(紺)なり」とあり、紺青の色をいう。また「繰(く)る」とよみ、わが国では「繰(あやつり)人形」のように用いる。糸を操るという意に用いたのであろう。

[訓義]
1. あお、ふかいあお、こん。
2. あおいきれ。
3. かとりのきぬ、あや。
4. と通じ、くる、くりとる。
5. わが国では、あやつる。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕繰 クル 〔字鏡集〕繰 アソブ・ヲスヂ・クル・マユヒク・イトスヂ

[語系]
繰tzisは声近く、は〔説文〕十三上に「(まゆ)を繹(くりと)りて絲と爲すなり」という。「繰る」はの訓を以て用いたものであろう。

[熟語]
繰纓繰演繰繭繰糸繰車
[下接語]
紺繰・山繰・糸繰

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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