煮熟した繭から繭糸(けんし)を引き出し,それを数本合わせて集束し,一定の繊度の生糸を小枠に巻き取る作業の総称。繰糸の方法には時代による変遷がある。すなわち,古くは繰糸操作のすべてを人手によったといわれる手挽(てびき)法にはじまり,江戸時代の後期には,歯車を組み合わせた手回しの小枠回転装置,生糸を小枠に均一に巻き取るための山路型の絡交(らつこう)装置などを設けた座繰り器が考案された。この考案により片手で小枠を回し,一方の手で接緒(せつちよ)などを行えるようになった。これを座繰り法という。明治初期以降は小枠回転の動力に水車を利用したり,さらには電動機を使用し,煮繭や繰糸の熱源にボイラーを設置して蒸気を使うことがはじまった。これを座繰(ざそう)法という。昭和の初期には接緒のための回転接緒器や,緒糸を機械的に引き出すための索緒機が考案された。この改良で両手で接緒を行うことができ,また作業者が受け持つことができる緒数が広がり,繰糸は立作業となった。これを多条繰糸法(立繰法)という。昭和30年代のはじめ,繰糸中の生糸の太さを自動的に検知する繊度感知器が発明され,これを契機として実用的な自動繰糸機が開発され,現在はさらに機能が改良された自動繰糸機となった。これを自動繰糸法という。
自動繰糸法は次のように大別される。(1)正緒繭の生産 索抄緒機に煮熟繭と繰糸途中で繭糸が切断した繭が自動的に送り込まれる。索緒部では索緒体につけられた索緒ぼうきと繭が接触し,繭の表面から緒糸が引き出され,抄緒部では,緒糸が機械的にすぐられて個々の繭から1本の繭糸が引き出される。この繭のことを正緒繭という。(2)生糸の形成 繭糸なん本かを集束して1本の生糸糸条を形成し小枠に巻き取る機構の単位を繰糸緒という。標準型の自動繰糸機1セットは400の繰糸緒で構成され,繰糸緒の下部は繰糸槽で,その前部は給繭部となっている。各繰糸緒で生糸が形成されるしくみは,生産しようとする生糸の太さに見合った数の正緒繭を繰糸槽におき,その繭糸を合わせて集緒器を通し集束し,よりかけ部,定繊度感知器,さらに絡交装置を経て小枠にいたる。繭糸は小枠の回転による引っ張り張力によって繰解される。生糸が連続して繰糸されるには,繰り終わった繭や繰糸途中で繭糸が切断した繭の代りの正緒繭が補給されなければならない。定繊度感知器は繰糸中の生糸繊度が一定の太さより細くなるとそれを検知し,自動的に接緒桿(かん)の作動を機械的に指示する。接緒桿は給繭部に待機する正緒繭をとり出し,接緒するのでつねに目的とする繊度の生糸が繰糸される。(3)繭の移行 繰糸により消費される繭の補給は煮繭機から煮熟繭が新繭補充部に送られ,必要に応じ,新繭補充部から索抄緒部に繭が送り込まれる。索抄緒部で得られた正緒繭は給繭部に消費量に見合った量が移送される。一方,繰糸槽で繰り終わった繭(不時落繭(らつけん)という)は,落繭捕集装置により,落繭分離部に集められて索緒部に搬送ベルトで送り込まれ,自然落繭は水流または空気流により副産処理工程に搬送される。
→製糸
執筆者:小河原 貞二
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…繭から生糸を作る諸工程の総称。広義では玉糸や野蚕(やさん)糸を作ることを含めることがあるが,一般にはカイコの作る繭を原料として生糸を作るための,生繭(なままゆ)の乾燥(乾繭(かんけん)),貯繭,原料調整,煮繭,繰糸(そうし)および揚返し,仕上げなどの一連の工程をいう。(1)乾繭 生繭を乾燥するのは,殺蛹(さつよう)して発蛾(はつが)を防ぎ,長期間貯蔵しても,カビが発生しないようにすることを目的としている。…
※「繰糸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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