六訂版 家庭医学大全科 「肛門痛」の解説
肛門痛
こうもんつう
Anal pain
(直腸・肛門の病気)
どんな病気か
肛門周辺に発生する痛みのことです。これには原因の明らかな
肛門痛にはチクチク、ズキズキ、ジーンとした性質のものがあります。一方、骨盤・直腸痛はズーンとした鈍痛、ボールがはまり込んだ感じ、神経痛のような発作性の痛み、いつも便意を感じる不快感などがあります。そして、排便によって変化する、長く座っていると出現、夕方または夜間に出てくるなど、日内変動もあります。
原因は何か
症候性肛門痛の原因には、表3のように一般的な肛門の病気から、直腸、泌尿生殖器、
無症候性肛門痛の代表的なものとして、消散性直腸肛門痛、
症状の現れ方
消散性直腸肛門痛とは、夜間から早朝にかけて、突然、直腸肛門部に激痛が走り、30分から1時間の七転八倒の苦しみのあと、朝になると何ごともなかったように治ってしまう痛みです。この時、無性に便を出したい感じがするのが特徴です。しかし、精密検査をしても、何の所見もありません。
肛門挙筋症候群は、立ったり座ったりする時に、
仙骨・陰部神経痛の原因は不明です。しかし、陰部神経に沿った圧痛がある、以前に高所から落ちたとか、尻餅をついた、最近背骨が曲がってきたなど、脊柱の変化との因果関係を推測させることがあります。
そのほか、心因的なもの、全身の病気の部分現象として、神経梅毒(ばいどく)、スモン病、脊髄腔造影、過敏性直腸、
治療の方法
症候性肛門痛では、原因となる病気を治療することが先決です。無症候性肛門痛では、食生活の改善、運動不足の解消、ストレス解消、うつ病・認知症対策など、生活環境を変えることがまずすすめられます。
次いで鎮痛薬などの内服、座薬をはじめ、鎮痛薬や副腎皮質ホルモン剤を加えた注射で、仙骨・陰部神経ブロックを行うことが有効になります。さらに、精神安定薬や抗うつ薬の内服などが効果的なことがあります。
外科的には、肛門挙筋の一部を切離して、筋肉のけいれんをとることも行われています。
松田 保秀
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報